79回 民族学研修の旅 伝統的なタミルのお正月とドラヴィダ文化を訪ねる─*現地の事情により中止となりました。

第79回 民族学研修の旅 伝統的なタミルのお正月とドラヴィダ文化を訪ねる─

2012年1月11日(水)~19日(木)9日間 *現地の事情により中止となりました。

ポンガルはタミル社会伝統の正月行事で、もともとは収穫祭、豊穣儀礼として祝われるものでした。新米をつかった甘いお粥が太陽神に捧げられ、雌牛の額や角も飾りつけられます。タミルナードゥの民俗行事として祝われていたものが、1930年代に国民的な正月行事と定められ、州全体で祝われるようになりました。今回は寺院の町として有名なクンバコーナムを訪ね、このお正月の雰囲気を体験したいと思います。

タミルナードゥはインドのなかでも、その独自性を強く主張している地域として有名です。南インドの人びとには、自分たちは「ドラヴィダ語族に属するのでデカン高原以北のインド・ヨーロッパ語族の人びととは異なる。また、この地域はイスラームの影響をあまり受けていないのでオリジナルのヒンドゥーらしさが受け継がれる、つまりインドらしさがある」という自負があります。南インドが基本的に農民で構成される社会であることも、バラモンやクシャトリアが多い北インドへの対抗意識としてあらわれてくるようです。じっさいに8世紀以降はヒンドゥー教の中心も南インドにうつっていましたので、今回の旅ではこうしたヒンドゥー教、ドラヴィダ文化の歴史と現在にたっぷりとひたれることと思います。民博の南アジア展示場にある山車が収集されたパルタサラティ寺院や40メートルもの巨大なゴープラムがそびえたつカパレーシュワラ寺院、ミーナークシ寺院なども訪問します。ほかにもインドらしらの象徴のひとつであるサリーの工房や現地の人がサリーを買うお店も訪ねます。インドのパワーの一端を肌で感じてみませんか?

第78回 民族学研修の旅 遙かなるビザンツ文明の現在 ─ ─民族と宗教のモザイクの歴史をひもとく

第78回 民族学研修の旅 遙かなるビザンツ文明の現在 ─ ─民族と宗教のモザイクの歴史をひもとく

2011/05/12/~05/25

バルカン地域は古代から東西文明を結ぶ交通の要衝であり、さまざまな文明、宗教、民族がゆきかってきました。長い歴史のなかでヨーロッパと東方世界の接点として、多文化、多民族が共存してきた地でもあります。たとえばひとつの町のなかにキリスト教の教会や修道院、モスク、シナゴーグとなんでもそろうというのがこの地域のおもしろさでもあります。同行講師の解説を聞きながら、ビザンツ文明の意味やバルカンの諸民族、宗教の歴史をひもといていきます。今までとは異なるヨーロッパと東方世界とのつながりが見えてくるのではないでしょうか。
山奥にたたずむ古い修道院やモスクをはじめ世界遺産が数多くのこされているのもこの地域の魅力です。たとえばリラの僧院では、マンダラをおもわせるような美しく壮大な壁画のほかに、かつて巡礼者や修道僧などたくさんの人びとの生活を支えた宿泊施設や台所なども目にすることができます。マケドニアのオフリドは、聖書のラテン語訳がおこなわれ、原始キリスト教が広まった時期の一大拠点の町でした。教会のほかにもヨーロッパでもっとも古い湖であるオフリド湖畔に位置しているため自然と文化・歴史的景観の複合遺産として登録されている美しい町です。ほかにも奇岩群の上に建てられた修道院で有名なギリシャのメテオラ、イスタンブールのブルーモスク、アヤ・ソフィアなど美しく、歴史的な遺産を訪ねます。

また、かつてブルガリア帝国の首都としてもさかえたヴェリコタルノボでは、日本語学科の学生たちに中世の面影を残す街並みを案内していただきます。地元の人が語る「我が町の歴史」を日本語で聞くことができるのはとても貴重な体験になるのではないでしょうか。長い旅の最後の訪問地、イスタンブールに向かう前日はエディルネという町でキャラバンサライ(隊商宿)を改築したホテルに宿泊します。当時の人びとの旅の様子に思いをはせてみたいと思います。そしてイスタンブールでは、東西交易の中心地として繁栄をきわめた都市の魅力、ビザンツ文明からオスマントルコへといたる歴史をあらためてふりかえり、旅をしめくくります。

5月のブルガリアはバラの咲き誇る美しい季節です。古くから世界各地で香水やバラ水の原料として愛されてきたブルガリアのバラ摘みも体験します。また、世界三大料理のトルコ料理をはじめ、ヨーグルトをもちいたブルガリア料理など素朴な地元の味もたのしみましょう。大小さまざまな市場めぐりも予定しています。歴史、そして現在の人びとのくらしにもふれていきたいと思います。


第78回 遙かなるビザンツ文明の現在-─民族と宗教のモザイクの歴史をひもとく 実施報告

2週間で3300キロを移動するという大旅行でしたが、ビザンツ帝国最盛期の領土にはとおく及ばないということを、最終日に訪れたイスタンブールの考古学博物館の展示で目の当たりにすることになりました。旅をしながらこの地の歴史を知るにつれ、現代にまで続く民族の関係やさまざまな問題についてもそう簡単には語れないという思いが強まりました。
参加者の感想を紹介します。

大城順次さん
美しい風景・キリスト教文明(歴史、正教の教会建物、イコン等)・古い歴史と現代に至る民族問題背景を見・知り・考え・ふりかえり、また、地元大学生との交流やおいしい食事、ワイン、ブルガリアの舞踊やベリーダンスの鑑賞、紺碧の青空の下でのボスポラス海峡クルーズなどなど、毎日が楽しさ・わくわく感満載のたのしい研修旅行でした。
新免先生が連日されたバス車中の「特別講義」は、キリスト教の教義や歴史、民族や民族のアイデンティティーの問題、バルカン地域およびヨーロッパで最近起こっている諸問題の歴史的・地理的背景、先進国や大手マスコミの情報操作等々、多岐にわたり時空を超えた縦横無尽なおはなしで、多くの知識を与えていただきました。
この講義からは、無数の理解し思索すべき課題(知的刺激)を与えられたように思います。
そのひとつでも今後自らの取り組みテーマとしてゆければ…と考えています。

武谷要子さん
かの地の国家・民族・文化の複雑な積み重なりにただただ圧倒され、まるでお菓子のミルフィーユをお腹いっぱい食べた感じです。もう一度、先生の推薦図書を読み直し、この消化不良をおさめなければとの思いです。
教会・モスク・修道院と首が”くの字”になりそうな程たくさんの天井をあおぎました。時代により変わる聖者の表情・衣装の技術にも興味はつきず、ふるいイコンの今に残る美しさには感動しながらも、人が信仰に支配された時代、信仰にしか救いを求められなかった時代を考えさせられました。
素晴らしい遺跡に名を残すこともなかった職人や貧しい中から献金したであろう人びともおもいました。

今回、行くことのできなかったバルカンのほかの地域を訪ねる企画も計画中です。 ご期待ください。


コプリフシティッツァの村の様子(ブルガリア)


スコピエの街並み(マケドニア)


オフリド湖畔にたたずむ聖カネヨ教会(マケドニア)

第77回 民族学研修の旅 台湾東部の原住民族を訪ねる ─ ─パイワン族・プユマ族の村へ

第77回 民族学研修の旅 台湾東部の原住民族を訪ねる ─ ─パイワン族・プユマ族の村へ

2011/03/10~03/13

台湾東部は原住民族が多く暮らす地域です。博物館や史跡のほかに同行講師の調査地の村を訪ね、パイワン族、プユマ族の方と交流します。1日目の晩にはプユマ族の方のお宅で伝統的なお食事をご用意いただきます。翌日はパイワン族の方の工房を訪ね、美しい刺繍やトンボ玉飾りなど、伝統工芸の制作の様子を見せていただきます。  あまりクローズアップされていませんが、台湾の原住民族を知る上で日本の植民地時代の調査(たとえば鳥居龍蔵や鹿能忠雄のコレクション)は貴重な資料となっています。原住民族文化について学ぶとともに、台湾の歴史についても振り返ってみたいと思います。


第77回 台湾東部の原住民族を訪ねる-─パイワン族・プユマ族の村へ 実施報告

日本から3時間足らずで行ける台湾ですが、予想以上にさまざまな発見がありました。原住民族の方々の意識の強さも博物館の展示も政治の状況と切り離すことができない台湾の歴史。日本統治時代の受容の柔軟さとタフさ。現地の空気のなかでお話を聞くことで、すっと入ってくるものがありました。そしてなんと言っても印象深かったのはプユマ族、パイワン族の方たちとの心あたたまる交流です。

参加者の西村陽恵さんの感想を紹介します。
プユマ族の方々のおもてなしに大変感動しました。伝統料理、お酒、踊り・・・。とくに後半、みなが輪になり手と手をとりあって踊れたことは最高にたのしかったです。
1日目の晩に講師の野林厚志先生の調査地の南王という村を訪ねました。日本語も達者なプユマ族の方々が粟のお酒にちまき、イノシシ、山鳩、カタツムリにさまざまな山菜やフルーツなどたくさんの伝統料理をご用意くださいました。私たちを迎える儀式、年長者を敬う儀式に続いて始まった踊りと歌の大宴会では、粟酒でほろ酔い気分の私たちも輪に加わって踊りました。
街のあちこちでみかけたビンロウも体験できましたし、釈迦頭という台東名産の果物も 何人もの方から「台湾の豊かな歴史、文化を知って、また行ってみたくなりました」という声が聞かれました。

参加者の枡野玲子さんの感想を紹介します。
台湾に関しては1895~1945年まで日本が支配していたことは知っておりました。しかし、九州大の土地に本省人、外省人、14の原住民族が住んでいるとは存じませんでした。
それ以上に台湾の人々が日本統治時代のものを保存、保全、再建しているなどということは夢にも思わないことで、驚きと同時にこの事態をいかに理解すればいいのか、私にとって新しい問題というか考えなければならない様々なことを突きつけられた想いです。


プユマ族の村での宴会の様子


年長者を敬う儀式の様子


ビンロウの食べ方講座


小袋に詰めて売られているビンロウ

第76回 民族学研修の旅 シベリアの森を歩く ─ 少数民族ナーナイの村を訪ねて

第76回 民族学研修の旅 シベリアの森を歩く ─ 少数民族ナーナイの村を訪ねて

2010年7月26日(月)~7月30日(金)

アムール川流域に暮らす少数民族ナーナイを訪ねます。針葉樹林の森に暮らし、伝統的に狩猟生活を営んできた人びとの文化を学びます。森や大自然に捧げられた祈りや歌、白樺を利用してつくられたカヌー、サケの皮でつくられた衣服など森と暮らす人々の生活を学びます。 針葉樹林や大河アムール川の散策、そして森と川のめぐみたっぷりのお食事なども楽しみましょう。


第76回 シベリアの森を歩く-少数民族ナーナイの村を訪ねて 実施報告

ハバロフスクからアムール川沿いに北上すること500キロ。少数民族ナーナイの村を訪ねました。村では、人びとのあたたかいもてなしを受けました。舞踊などを披露してもらったり、伝統工芸の体験などもさせてもらいました。食事も私たち日本人にもなじみやすい味で、名物の鯉や鮒のスープにハンバーグ、赤シカの肉団子、とれたての野菜や蜂蜜などをいただきました。 参加者からの感想を紹介します。

<小川朋海さん>
ロシアは、私のイメージよりもずっと明るい国でした。ハバロフスクだったからでしょうが、旧ソ連の名残もあるけれど、BRICSというか日本には少なくなっている元気さがあったような気がします。古い教会がなかったのが残念でなりません。ナーナイ地区は驚きの連続でした。穴をほっただけのトイレ、舗装されていない道路なのに家の中ではテレビが見えて、生活も私たちとあまり変わらない快適そうな暮らしをしていることなど。でも伝統は受け継がれていって欲しいと思いました。

<橘ミワさん>
少数民族ナーナイ村民あげて、犬も猫も総出での歓迎に驚き。今更ながら失われつつある古き良き日本の昔を思い出しています。

<枡野玲子さん>
コンドン地区、トロイツコエ地区のナーナイの人たちは魚皮や白樺の樹皮を原材料として衣類、靴、器などを製造していることを実感。見るだけでなく体験までさせていただいて、彼らの生活の仕方やあり方が生業─漁撈と植物の採集─と深く関わっていることがよくわかった。体験した魚皮のなめしによって、魚皮を使ったものを作るのは気が遠くなるほどの時間と労力、特に体力が必要だと痛感した。

<大城順次さん>
旅行3日目、同行講師のフィールド・コンドン村に到着するなり、ナーナイ民族伝統の儀式や舞踏などの大歓迎セレモニーに感動する。昼食後、雨天のため室内に場所を変えて、様々な民族伝統の舞踏・演劇ショーを見学する。この日のために、長期間にわたり村人たちが準備・練習を重ね続けてくれたであろうことを想うと、強く心を打たれた。我々の見た、ナーナイ人の舞踊は現代的にショーアップされてはいたが、シャーマンの踊り、結婚の踊りなどとても美しく楽しいものであった。
3日目のコンドン、4日目のトロイツコエ両村で民族芸術・工芸等の体験学習は今回の旅の圧巻であった。なかでも、魚皮の衣服の製造実演と説明受け、我々も伝統の器具を使って、揉んだり、挟んだり、堅い表皮を剥いだりすることなどで、魚皮を柔らかくする方法を体験したことがその一例。「そうか! このような道具を使い、このようにして堅い魚皮を柔らかくしていたのか」との発見の喜びもあった。
今回の研修旅行はナーナイ民族の人たちと交流する時間が多く、得難い体験をするとともに、日本人のルーツの一端に想いを巡らすことができた。短期間ではあったが、まことに楽しい研修旅行であった。


トロイツコエの文化センター所長さんのお宅にて。
手作りの昼食をいただきました。


コンドン村の聖なる丘の前にて。


トロイツコエの郷土博物館。やさしい顔の神像がお出迎え


7 アムール川にて釣りをする漁師さんを発見。
網を川にいれてひとすくいでも魚が何匹かかかっていた様子でした。

第75回 民族学研修の旅 ペルー プレ・インカの遺跡と人びとのくらし ─ 15日間

第75回 民族学研修の旅 ペルー プレ・インカの遺跡と人びとのくらし ─ 15日間

2009年10月8日(木)~22日(木) 15日間

アンデスでは、空中都市マチュ・ピチュで有名なインカ文化だけでなく、仮面など黄金製品が大量出土したシパン文化、美しいレリーフや土器で知られるモチェ文化、巨大な地下神殿を残したチャビン文化など多くの文化が、その長い歴史のなかで展開されました。こうしたプレ・インカの遺跡を、日本の学術調査団の一員であった藤井龍彦民博名誉教授とともに訪ねます。

また、アマゾン源流地帯の熱帯林(セルバ)、雪山をいただく山岳(シエラ)、乾燥した海岸地帯(コスタ)という、ペルーに特徴的な自然環境を一度にめぐります。市場や農村では、現在の人びとの普段の生活を垣間見ることもできるでしょう。 アンデスの今と昔、北と南、低地と高地、縦横に駆け抜けながら、その多様な姿を目のあたりにする旅です。


第75回 「ペルー プレ・インカの遺跡と人びとのくらし」-15日間 実施報告

砂漠、高原、6,000メートル級の雪山に熱帯雨林。多様でダイナミックな自然環境の中央アンデス地帯。そこに展開した幾多の古代文明。今回の旅はそれらを一挙に体験するという壮大な旅でした。参加者の感想をご紹介します。

中村千文さん
チンチェロの日曜市で見かけた地元の人たちのカラフルな衣装、その前に並べられた多くの作物。私が見たかったチューニョ(乾燥したじゃがいも)が生のじゃがいもとともに並んで山積みされており、先人たちの保存方法が今も生きていることを実感した。また、一部では今なお物々交換での取引がおこなわれている様子など、人びとの生活を垣間見ることができた。

佐々木都さん
訪れたそれぞれの遺跡に立ち、吹く風に数千年の時を漂っていた気がします。はるかな時に身を置いてみるということを今まで感じたことはなかったのですが、とてもフシギで心地よいものでした。石工の妻であったり、農作業をしながら娘の為にパンを焼いていたりとごく平凡な生活風景のなかにいました。コカを口に含んで?!食の豊かさも驚きの連続でした。


クスコ郊外のチンチェロの市場で


クントゥルワシの博物館にて。おそろいの帽子で見学