90号 1999年 秋

機関誌
スルマの女性
新田 樹

スルマ

新田 樹
福井勝義

エチオピア西南部からスーダン南部にかけての地域は民族間関係が複雑かつ流動的で、その体型の把握はほかに類をみないほど困難である。襲撃を繰りかえすかれらの日常の背景にあるアイデンティティ徒は何か。牧畜や農耕を生業とするかれらの日常を、スルマ系民族であるバーレやチャ・イを中心に、新田氏の新鮮な映像でおとどけする。ボディ社会をはじめ、オモ川・ナイル川ちいきにおけるいくつもの民族を対象に、長年のフィールドワークの経験をもつ福井氏には、この地にいける民族間かんけいをと戦いの論理に、エスノシステムの観点からせまっていただいた

サハの馬乳酒まつり

小長谷有紀

かつてアジアの草原を縦軸にかけめぐったテュルク系騎馬遊牧民の文化は、いまも国境の枠を越えて生きつづけ。ユーラシアの歴史を物語っている。極寒のシベリアに適応したウマの放牧をおこなうサハ共和国の馬乳酒まつりをたずね、テュルクの故地をされるモンゴル高原に伝わる儀礼とのつながりを読む

シッキムの発酵食品

吉田集而
小崎道雄

ネパールとブータンの狭間にあり、インドと東方アジアの文化が交差するシッキムでは、どのような発酵食品がつくられているのだろうか

イニュピアック・エスキモーのクジラ猟

八木 清

ネパールとブータンの狭間にあり、インドと東方アジアの文化が交差するシッキムでは、どのような発酵食品がつくられているのだろうか

孔雀は舞い、竹は奏でる

中国雲南省南部シップソーンパンナーの音楽と舞踊
秋篠宮紀子

一九九八年の八月上旬からの役二週間、中国雲南省の昆明と西双版納泰(タイ)族自治州を訪問した。そこでは、西双版納(タイ語表音でシップソンナーパンナー)に住むタイ族、ハニ族、そしてチノー族の音楽や舞踊を見聞する機会を得た

民族学者のまなざし9

スワヒリ・コーストとネットワーク
大塚和夫

89号 1999年 夏

機関誌
ラジャスタンの女
管 洋志

客船「飛鳥」 舞台裏の国際社会

芳賀日出男

98日間世界一周の旅をつづけるうち、この日本の客船「飛鳥」が多国籍の船員たちによって運航される「混乗船」であることを知った。ボーダーレス時代の国民性を世界一周客船にみる

アラム語を話す村マールーラ

川又一英

イエス・キリストはユダヤ人でありながらアラム語を母語としていた。キリスト教がオリエント世界から地中海世界にひろがるにはギリシャ語がアラム語に取って代わった。アラム語は地上からほとんど消え、今日では、この聖なる言葉は、シリアのマールーラと周辺の村で生き残っているだけである

神と人との交流の宴ルロ

長野禎子

いっせいに焼き払われる供物、人体の肉と血を神に捧げる針刺し。青海省チベット族を中心につたわるルロの祭りに、供物の「破壊」と、身体をとおしての神とのコミュニケートという、チベットの宗教の基層をみることができる

長野県新野の盆踊り

文・小川博司
写真・岡本 央

夜を徹し、唄声とかけ声が山間の地に響きわたる。楽器もレコードもいっさい使わず、10時間近くもつづくこの盆踊りの、独特のノリと快楽

川蔵公路を行く

鎌澤久也

おとずれる地域ごとにちがった表情をみせるチベット。四川省の成都からチベット自治区のラサをつなぐ、2500キロの道のりを辿った

バルト海の要衝オーランド

小谷 明

フィンランドとスウェーデンに挟まれたバルト海北部、ボスニア湾の入り口に点在するオーランド諸島。のどかな風景のなか、廃墟と化した要塞からは、歴史をものがたるように砲台が海を向いている

海を渡った「大モンゴル展」

写真・大塚知則
文・張 慶浩/松原正毅/李 仁淑/小長谷有紀ほか

民博で1998年に開催された特別展「大モンゴル展」がこの六月から韓国のソウル郊外の京畿道博物館でも開催されている。日本、韓国、モンゴルの3国の協力のもとに立案された企画が実現するまでの経緯をそれぞれの立場でふりかえり、その意義を考える

民族学者のまなざし8

「制度」としての人類学者
大塚和夫

88号 1999年 春

機関誌
森の妖精たち
船尾 修

森の民の世界から

市川光雄
船尾 修

ムブティ・ピグミーは、中央アフリカの森林地帯、コンゴ盆地北東部のイトゥリの森で生活する。われわれと同時代を生きている狩猟採集社会の暮らしは、産業社会になにを語りかけているのか

物質・富・生命が循環する狩猟採集民の世界
市川光雄

時代のうねりのなかに生きるムブティ・ピグミー
船尾 修

綿花王 岡田幾松 ペルー日本移民とアシエンダ

稲村哲也

明治32(1899)年、日本人が第一回移民としてペルーへ渡ってから今年で100年がたつ。アシエンダ(大農園)での過酷な労働の日々をへて、大農場経営者への道を切り開いた男の生涯から、日本人移民の地域社会史を追う

霧の大地アンデス

高野 潤

1973年からアンデスを歩きつづけてきて、ここが霧にはぐくまれた大地であることを、次第に実感するようになった

トゥルナ・ニョマン

バリ島、トゥンガナン・プグリンシンガン村の若者組修行課程
内海 顕

儀礼の準備と遂行に明け暮れるこの村で、聖なる役をになうべく、少年たちは一年間の修行をかせられる

アザライとキャラバン・コンボイ

サハラ長距離交易の歴史と現在
南里章二

ふるくは古代ローマ時代にさかのぼるともされるサハラ交易は、沙漠という限定された地域間のみならず、イスラーム世界の発展の原動力ともなった『スーダンの金』の輸送をはじめ、外部世界の経済にも大きく関わってきた。アルジェリアとニジェール、マリをつなぐ交易ルートの旅を中心に、記録されることのすくない、サハラの交易者たちの現在の活動状況に迫る

民族学者のまなざし7

反FGM運動と権力関係
大塚和夫

87号 1999年 新春

機関誌

 

アンデス高地 自然と人間と文明と

山本紀夫

赤道をこえて南極ちかくまで、約8000キロにもわたる世界最長の大山脈・アンデス。そこには、砂漠、オアシス、草原、氷河、熱帯林など、さまざまな自然環境がみられる。そのなかで、ペルーからビリビアにかけての中央アンデスの高地は、その海岸地帯とともに、ふるくから高度な文明を生みだしてきた。その頂点となったインカ帝国も、首都を標高3400メートルのクスコにおいていた。高地での暮らしと文明を、人びとはいったいどのように築きあげてきたのだろうか。30年にわたりアンデスを歩きつづける研究者の、フィールド・ワークにもとづく文明論的考察  

1999(平成11)年1月20日発行 
発行所:財団法人 千里文化財団