98号 2001年 秋

機関誌
ニヴフの女性、ゾーヤ・アグニュンさん
写真◎大塚和義

特集 ゆたかなる北太平洋

海岸や内陸、河川、湖沼、島嶼、森林など北太平洋のさまざまな自然環境のなかで、人びとは海獣や陸獣の狩猟、魚撈、植物採集をおこない、長く時間をかけて、それぞれの土地にふさわしい文化をかたちづくってきた。しかし、人類の活動が地球的規模で活発化するにしたがい、ゆたかな「北」の資源は無統制な乱獲の対象となった。「地球環境保護」という課題をつきつけられた21世紀の人類に、「北」の先住民の知恵が必要とされている

誌上フォーラム
交易の民が「北」のイメージをくつがえす

大塚和義
佐々木史郎
岸上伸啓

貧しい狩猟採集民のイメージで語られることのおおい北太平洋の先住民は、そのむかし、ゆたかで誇り高き交易民だった。歴史をさかのぼり、日本、中国、ヨーロッパ市場を相手に交易をくりひろげた先住民社会を再構成する

企業ミュージアム探訪 第6回
「江崎記念館」

近藤雅樹

一粒においしさと健康の夢を託して

大いなる旅ーマダガスカル、マナンザーリの割礼祭サンバチャ

羽鳥志保

マダガスカル東海岸の街マナンザーリでは、7年に一度「金曜日の年」に割礼祭サンバチャがとりおこなわれる。「ムハンマドの時代」に遠くメッカから海を渡ってやってきたという始祖ラミニアの苦難の旅、アンタンバフーアカの人びとは祭りをとおして追体験する

万国物欲博物図鑑 no.3
目に見えない力の存在

土橋とし子

会員の広場
会員多士済々3

自分でつくる4オクターブの音の世界

平野寛子

顔フォーラムから 3
顔のない世界のコミュニケーション

村澤博人

環境と文化を考える 2
森の中からみた熱帯林問題

阿部健一

20年前に原生林にかぎりなく近いボルネオの森をたずねてから、熱帯雨林を歩いてきた。その本質を知らせることもなく、消失しつづける森。かかわる人間により、「問題」も多様化する熱帯林問題を考える

97号 2001年 夏

機関誌
クム・フラとその娘
写真◎チャック・アンダーソン

特集 ハワイ
多民族社会の光と影

後藤明
清水昭俊
勝又邦彦
白水繁彦
山中速人
林勲男
城田愛

士族のナドン
漢化したモンゴル系民族の祭り

庄司博史

中国少数民族の土(トゥー)族には、仮面劇を中心とするナドンとよばれる祭りが伝承されている。音声や語彙に中世モンゴル語にさかのぼる古形を保存しながら、農民としての長い歴史をもつ彼らにとって、ナドンはいかなる意味をもうのか

顔フォーラムから 2
俳句、顔をかくす文芸

野村雅一
一色みどり

万国物欲博物図鑑 no.2
大満足のインテリア大作戦

土橋とし子

建築人類学者のまなざし
リセット感覚を越えて

佐藤浩司

企業ミュージアム探訪 第5回
「三輪そうめん山本・麺ゆう館」
緑濃く水豊かにして麺涼やかに

小山修三

環境と文化を考える1
国境を越えるチョウ

秋道智彌

いま環境問題に関する情報が氾濫するなかで、森林や動植物そのものを、わたしたちはどれだけ理解しているのだろうか?国家と生活者、環境保護と経済活動、それぞれの立場や利害関係が錯綜するなかで、人間と自然がせめぎあう現場から、環境問題の本質を考える。四回連続のシリーズ「環境と文化を考える」の第一回目

96号 2001年 春

機関誌
張り子ダルマ
写真◎勝又邦彦

特集 渋沢敬三とアチック・ミューゼアム

近藤雅樹/渋沢雅英/橘川俊忠/渋沢敬三/斎藤純/梅棹忠夫/熊倉功夫/中牧弘允

生物学にあこがれていた大学生が、自邸内の物置小屋にあった屋根裏部屋に小さな博物館を開いた。屋根裏(アチック))にあったので、アチック・ミューゼアムっと名づけられた。動植物の標本、日本各地の郷土玩具の収集を経て、彼はやがて日本人の日常生活に深くかかわってきた素朴な道具の収集に向かう。身近に入手できる素材をもちい、自らつくり使う道具。博物館主・渋沢敬三は、それらの品物に「民具」という名前をあたえた。

アフリカに発酵文化をもとめて

吉田集而

酸っぱく独特のにおいをもつ発酵食品。東アジアやヨーロッパの食文化のなかでは、発酵食品が重要な位置を占めるが、アフリカにも発酵食品が発達したふたつの地域がある。西アフリカ諸国と北東アフリカのエチオピアである。

万国物欲博物図鑑 no.1

大正昭和くらしの博物誌
土橋とし子

顔フォーラムから 1

イッセー尾形の顔カタログ
野村雅一

企業ミュージアム探訪 第4回

「竹中大工道具館」
道具が伝える匠の技と精神

佐藤浩司

中央アジアの二〇世紀

帯谷知可

1991年、ソ連解体によって、独自の顔をあらわし、それぞれの道を歩みはじめた中央アジアの国々。現在に至る、中央アジア諸国の民族と国家の成立の歴史をたどり、二一世紀のゆくえを語る。

95号 2001年 新春

機関誌
少女とバオバブ
飯塚明夫

男として、ウシの背を渡る

増田研

エチオピア南部、バンナの成人儀礼
人生のもっとも大きな節目となる儀礼のクライマックスで、少年は一列に並んだウシの背を渡り、おとなへの道をあゆみはじめる

開発のなかに生きる

石井洋子

ケニア共和国、ムエア灌漑事業区のギクユ入植者の生活
政府によって建設されたルルミB村の日常世界は、いわゆる「伝統的なむかしながら」の生活ではない。国家事業の一大開発区のなかで、民営化闘争という波乱にもまれながらも、工夫をこらし、綿々といとなまれているギクユ人の生活と考え方をさぐる

企業ミュージアム探訪 第3回
サントリー山崎蒸留所「山崎ウイスキー館」
~水が育み木樽が醸す琥珀色~

杉田繁治

アリ・パシャ伝説紀行 バルカンの深層を考える

川又一英

悲劇が独裁者にしてギリシャとバルカン諸民族の独立に大きく寄与することになったアルバニア人英雄アリ・パシャ。この矛盾に満ちた存在のなかにこそ、モザイクのように錯綜するバルカンの民族・宗教を理解する鍵のひとつがある

聖母信仰

処女懐妊により、永遠に汚れなきものの象徴とされる聖母マリア。それは、スペイン、ポルトガル両国からなるイベリア半島の宗教・文化にも色濃く影を落としている。地中海世界にひろくみられる「地母神」という視点から、この地域の人びとの心に宿るマリアについて考える

マリアへの思慕とともに
赤地経夫

母なる像の源流を求めて
立田洋司

メコン川源流域の民族と自然と

文・青木亮輔
写真・藤森和則

ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジアをその流域として、ベトナムより南シナ海へと注ぐメコン川は、中国に端を発する。東京農業大学農友会探検部とOB会は、その源流域五六〇キロをカヌーで航行した

黒人大学留学日記

冨田晃

アメリカ合衆国という場において、黒人が黒人であるための集合的記憶、「奴隷」と「アフリカ」は、かれらのなかでどのように構築されているのだろうか。わたしはこの問いにこたえるため、ニューヨーク州唯一の黒人大学に留学した

アフリカ中毒

岡安直比

アフリカの大地、子連れでゴリラを研究する。ヒトとはないか、霊長類とは何かを考えるヒントが、娘とゴリラとの異種間交流のなかにあった