134号 2010年 秋

機関誌
30数年ぶりのモンゴル
梅棹 忠夫

特集 梅棹忠夫の軌跡

2010年7月3日、国立民族学博物館初代館長梅棹忠夫先生が逝去されました。 本誌『季刊民族学』は梅棹先生が生みだされた家庭学術誌です。 本号では、追悼の思いをこめ、梅棹先生の生涯、とくに学術探検の軌跡をたどります。

◎第三高等学校白頭山遠征隊――第二松花江源流の確認

◎京都探検地理学会カラフト踏査隊――南極探検を夢みて

◎京都探検地理学会ポナペ島調査隊――はじめての学術調査

◎京都帝国大学北部大興安嶺探検隊――白色地帯踏破

◎蒙古善隣協会西北研究所
――モンゴル牧畜調査、自然科学から人文科学へ

◎平野村 農村調査――生態学的手法をもちいた調査

◎京都府山岳連盟屋久島踏査隊――人間生態学を目指して

◎京都大学カラコラムヒンズークシ学術探検隊
――モゴール族調査から文明の生態史観へ

◎第一次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
――比較文明論の実地調査

◎日本探検

◎第二次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
――チュラーロンコーン大学との共同調査

◎京都大学アフリカ学術調査隊――ダトーガ牧畜民調査

◎モスクワ第7回国際人類学民族学会議――はじめてのヨーロッパ体験

◎モントリオール万国博覧会視察――はじめてのアメリカ体験

◎第一次京都大学ヨーロッパ学術探検隊――バスク農村調査

◎京都大学大サハラ学術探検隊――リビア牧畜民調査

◎第二次京都大学ヨーロッパ学術探検隊――中部イタリア山村調査

◎中東文化ミッション――中東研究の必要性を実感

◎モンゴル人民共和国――オルホン突厥碑文を見る

◎中国・チベット自治区

再録 梅棹忠夫

梅棹 忠夫

梅棹忠夫先生が、これまで『季刊民族学』誌上で著したもののなかから抜粋し、再録をする。

◎開館にあたって

◎これからの十年

◎『季刊民族学』第50号によせて

133号 2010年 夏

機関誌
木造船ダウ。アラブ首長国連邦バーレーン沖合にて
大村 次郷

特集 鄭和の足跡をたどる
海からみたアジア

写真提供・大村 次郷

われわれが暮らす「アジア」は、多種多様な宗教、民族が混在し、その全体の基層をなすものをみつけだすのは容易ではない。しかし、この判断は国家を単位とした「陸」への偏った視点に起因するのではなかろうか。近代以前のアジアにおける海上ネットワークを見直してみることは、グローバル化がもたらした現代のネットワークを相対化するためにも有意義かも知れない。 本特集では、ムスリムを祖先にもち、東南アジア、インドからアラビア半島まで航海した中国明代の武将・鄭和を物語の中心に据え、彼が訪れた港市や船舶の今昔に注目する。 鄭和の航跡を現代の視点からたどることで、これまでアジアとしてとらえていた以上のものが、アジアのネットワークとしてみえてくるにちがいない。

序章 海からアジアをみる 陸から海への視座転換
文・濱下 武志/写真・大村 次郷

I章 鄭和の大航海と海域世界

鄭和とその時代
 文・濱下 武志/写真・大村 次郷

鄭和の航海術と琉球への影響 「航海針法」の伝播をめぐって
真栄平 房昭
媽祖 航海信仰からみたアジア 藤田 明良

天理大学付属天理図書館所蔵 太上説天妃救苦霊験経
藤田 明良

II章 港湾都市の過去と現在

海にむかった華南の人びと
文・瀬川 昌久/写真・大村 次郷

社会主義・中国のふたつの鄭和像 信太 謙三

東南アジアの交易をめぐる海民社会のダイナミクス
長津 一史

インドネシア華人の鄭和信仰 貞好 康志

スリランカ、海村の人びと 高桑 史子

宗教対立と鄭和碑文 杉本 良男

アラビア海を中心とする海域ネットワーク
インド洋交易の歴史に隠されたオマーン移民
大川 真由子

終章 鄭和から続く広州のムスリムコミュニティ
文・濱下 武志/写真・大村 次郷

ブルターニュに生きるケルト文化

文・原 聖
写真・武部 好伸

海峡をはさんでイギリスとむきあうフランス北西部。 四世紀、ブリタニア(現在のイギリス)を追われたブリトン人(ケルト系)たちは、この地に安住の地を求めた。フランスではこの地域をブルターニュとよび、彼らの故郷ブリタニアをグランド・ブルターニュ(英語ではグレート・ブリテン)とよび区別した。 その後、フランク王国(ゲルマン系)による支配などを受けながらも、他の地域とは異なるケルト系文化を継承してきた。

しかし、近代から現代にかけての中央集権の強化、学校教育の普及は、彼らから独自の文化を少しずつ消し去ることになり、現在では、ブレイス(ブルトン)語が話される機会は極めて少なくなった。その一方で、街の看板にブレイス語を使用するなど、保存・復興の意識も高まりつつある。 フランス・ブルターニュに焦点をあて、歴史的背景をおさえつつ、現代に生きるケルト系の人びとを見つめ直すことにより、国家・地域統合と少数派言語、文化の共存のあり方について考えてみたい。

再見細見世界情勢16
特別企画 大国に翻弄される中東
イラン・イラクとアフガニスタン

イランとイラク、そしてアフガニスタンが位置する中東地域の情勢は、現在においても緊迫した状態が続いている。これらの国々の歴史を振り返ってみると、国家の成立から現在にいたるまで、アメリカやソ連といった大国をはじめとする諸国の干渉を受けつづけてきている。国家や国内外の勢力の思惑によって、現在の状況がある。そのターニングポイントのひとつである、イラン・イラク戦争と、ソ連によるアフガニスタン侵攻を振り返る。
イラン・イラク戦争とスンナ派・シーア派の対立 文・富田 健次
歴史の教訓 アフガニスタンの悲劇が語りかけるもの 文・金 成浩

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

132号 2010年 春

機関誌
アレクサンドロスの妃ロクサネの故郷、バクシュヴァル。ウズベキスタン
大村 次郷

特集 アレクサンドロスの道

写真提供・大村 次郷

アレクサンドロスの道を辿ろうとする者は、必ずや歴史と虚構のはざまをさ迷う。 悠久の昔にユーラシアを駆け抜けた若きマケドニア王の幻影を求め、大村次郷氏が大陸各地で捉えた風景に思いをはせるが、その実像を求めれば求めるほど、積もり重なる遺構・文献・伝承の層の厚さに眩惑する。アレクサンドロス像の輪郭は、すでにその生前から今日にいたるまで、常に変容し続けてきたのである。

アレクサンドロスの死後、彼の版図を越えたさらに広範な地域の人びとが、大王について語り継いできたものは何か?我々が今日アレクサンドロスに見出すものは何か?この探求の道を旅するとき、ユーラシア諸民族の歴史そのものが繰りひろがる。

I章 アレクサンドロス帝国の実像 森谷 公俊

アレクサンドリアの現在 赤堀 雅幸

II章 変容するアレクサンドロス像

ギリシアからの逸脱 『アレクサンドロス物語』
 橋本 隆夫

イスカンダルとズ・ル・カルナイン

アラビアにおけるアレクサンドロス 蔀 勇造

破壊者から英雄へ

イランにおけるアレクサンドロス伝承 山中 由里子

呪われたもの

ゾロアスター教徒のアレクサンドロス観 山本 由美子

東からの風 中央アジアのアレクサンドロス余話
 加藤 九祚

中国に伝わったアレクサンドロス伝承
 山中 由里子

諏訪の御柱祭

文・織田 竜也
写真・高原 一光

大勢の人間が取り巻く大木が急坂を滑り落ちる。今年は諏訪の御柱の年だ。現地では「七年に一度」と称されるがこれは数えの表現で、干支でいえば寅と申、「六年に一度」おこなわれる祭りである。正式には「式年造営御柱大祭」というが、「オンバシラ」といえば全国的に通用する。メディアで報道される大木が急坂を滑り落ちるシーンは下社「木落し」のものだが、御柱祭はそれだけにとどまらない。そもそも諏訪大社がどういう神社なのかですら、意外と知られていないものだ

再見細見世界情勢15
東ティモール
グローバル化時代の国民国家建設
松野 明久

ラテンアメリカのカーニバル
多様な祝祭空間を漂う

白根 全

ラテンアメリカでおこなわれるカーニバルは、我々がイメージするより多種多様である。おなじみのリオのカーニバルのように、ヨーロッパからの移住者が持ち込んだカトリックの謝肉祭が原型のものもあれば、先住民により長く受け継がれてきた名も知れないものもある。さらにラテンアメリカからの移住者が多いアメリカ合衆国では、少し「アメリカナイズ」されたカーニバルが彼らによりおこなわれている。ラテンアメリカ諸国を中心に、多様なカーニバルを俯瞰し、その魅力を紹介する。

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

131号 2010年 新春

機関誌
ビルラー財閥の庭園に集ってくる人たち
大村 次郷

特集 ガンディーをたどる

写真提供・大村 次郷

現在、インドは急速な経済成長で世界の注目を集めている。そのインドを独立に導いたガンディーが没してから60年が経過した。 混沌とした情勢のなか、ガンディーはなにを目指し、人びとにどう受けとめられていたのか。また、非暴力・不服従というガンディーの遺産は、現在どう捉えられているのか。 本特集では、今いちどガンディーの軌跡をたどり、その歩みをさまざまな角度から見つめなおす。

いま何故ガンディーか 杉本 良男
非暴力とM.K.ガンディー 長崎 暢子
ガンディーとジンナー 浜口 恒夫
菜食とガンディー 杉本 良男
アンベードカルとガンディー カーストの位置づけ 舟橋 健太
ガンディーの断食 三尾 稔
聖者と詩聖 ガンディーとタゴール 中谷 哲弥
ガンディーが歩いた道
1946年のノアカリ暴動と今日の南アジア 外川 昌彦
ガンディーと南インド 山下 博司
ヒンドゥーナショナリズムとガンディー 近藤 光博
ガンディーの志を継ぐものたち 石坂 晋哉

聖山カワカブ
山群一周の巡礼路をゆく

小林 尚礼

チベットのカム地方南部に、チベット人が大聖山と崇める山がある。その名は「カワカブ」、チベット語で白い雪を意味する山だ。標高6740メートルのこの山を含め、6000メートル以上の頂が30キロメートルにわたって6つつらなる雪山群を、人は梅里雪山(メイリー シュエシャンともよぶ。インド洋から吹きつける湿った季節風の影響で、ヒマラヤの6000メートル峰よりも降雪量が多く、大きな氷河をもち、山腹には豊かな森が広がる。三江併流(サンジャン ビンリウ)の中心部に位置し、山麓の東側をヤ・チュ(メコン川上流の瀾滄江(ランツァンジャン))に、西側をジャムグ・チュ(サルウィン川上流の怒江(ヌジャン))に削られて、カワカブの一帯は世界でもまれに見る大峡谷地帯を形成している

万国喫茶往来 第7回
ひとときの休息
「シルクロード」の茶
文・梅村 担
写真・大村 次郷

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(中国・チベット)
南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ)