第78回 世界の製藍、日本の藍染めー気候と風土に育まれた色、藍を知る

演題
世界の製藍、日本の藍染めー気候と風土に育まれた色、藍を知る    

乾燥させた蓼藍の葉を「蒅の室」の床に積み上げて、水を打って繊維発酵させ、発酵温度にあわせて「切り返し」と「水打ち」を繰り返す(提供・井関和代)

内容
 藍植物とは、藍色の成分をもつ植物の総称で、世界各地に100種以上あることが知られています。藍は生葉でも染めることができますが、それでは作業が植物の生育シーズンに限られ、また濃い青色に染めることができません。そこで人びとは、藍を染料化して貯蔵できる状態にする製藍の技術を見出しました。乾藍や玉藍、沈殿藍など民族独自のさまざまな製藍技術が各地で生まれました。これには、日本固有の藍染料「蒅」も含まれます。本セミナーでは、世界各地の製藍・染色技術とともに、日本固有の藍染めを体験的に知ることで、藍の面白さ、「染める」という行為の奥深さについて理解を深めます。
 見学先となる紺九は、明治3年創業の紺屋(藍染屋)です。かつて日本各地にあった紺屋では、阿波産の藍を取り寄せるのが普通でしたが、栽培、蒅つくり、染めを一貫しておこなうのが紺九の藍染め。桂離宮の襖紙の染色など、文化財の修復にも携わっておられる4代目の義男さんは、国の選定技術保存保持者でもあります。自家製の藍で染色体験をさせていただくほか、藍と向き合う日々のお仕事、文化財修復についてのお話などもうかがいます。

トーゴ・ミナの製藍作業。藍藤(ヨルバ・インディゴ)の幼葉をつき、丸めて乾燥して保存(提供・井関和代)

【実施プログラム】
■レクチャー
「藍染めとはー世界各地の製藍事例を踏まえて」(講師:井関和代)
100を超える藍有植物でなされる藍染めは、その製藍技術も、染色技術も、地域・民族によってさまざまです。各地の事例とともに、藍染めについて理解を深めます。

■現場見学
栽培から染色までを一貫しておこなう紺九の藍染め。藍畑、蒅の室、染め場を見学し、日本の藍染めについて理解を深めます。

■染色体験
紺九では化学薬品を使わず、蒅と灰汁だけを用いて藍染液をつくります。染め場をお借りしてスカーフを染めます。染色した布はお持ち帰りいただきます。

この染め場で染色体験をさせていただく(提供・井関和代)

■資料閲覧① 紺九の藍染め
紺九は文化財の修復作業にも携わっています。染め糸や布、紙などの染色資料を、解説を交えて見せていただきます。

■資料閲覧② 世界の藍染め(解説:井関和代)
東南アジアやアフリカなど、講師が各地で収集した染色資料を見せていただきます。絞り染めやろうけつ染めなど、染色技術の面白さにも注目します。

マリ・ボゾの藍建て作業。灰汁を入れた壺に玉藍をほぐして投入。発酵を待つ(提供・井関和代)

※紺九の染色品の販売もおこないます。

【注意事項】
・汚れてもよい服装、靴でご参加ください。スニーカーなど、靴底の平坦な動きやすい靴でお願いします。薄手のゴム手袋もご用意ください。
・レクチャー、資料閲覧、昼食は紺九・森さんのご自宅の和室を利用させていただきます。昼食はお弁当です。

講師
井関 和代(大阪芸術大学名誉教授)
協力
森 義男、森 芳範(紺九)

日時
①2018年5月26日(土) 
②2018年5月27日(日)

10時30分~17時00分 ※集合場所:JR野洲駅(10時)

場所
紺九[滋賀県野洲市小篠原1603]

募集人数
20名(最少実施人数15名)※申込先着順

参加費
友の会会員:13,500円 一般:15,500円

申込方法
友の会事務局までお申し込みください。※申込締切:2018年4月27日(金)

第77回 植物から博物学の世界を知る――東京大学総合研究博物館見学

演題
第77回 植物から博物学の世界を知る―東京大学総合研究博物館見学

内容

シーボルトが採集したクリの標本(撮影・池田博)

 幕末に来日したシーボルトは、日本の植物に魅せられただけでなく、江戸時代の本草学者による植物の理解や描写にも感銘を受けたといわれています。
 本草学は、本来は薬として役立つ植物などを研究する学問です。日本では江戸時代に中国から移入された『本草綱目』が刺激となり活発化します。しかし、初めは文献から薬草についての知識を学ぶことが主で、実際に植物を観察することはほとんどしませんでした。しかし、1708年に貝原益軒が『大和本草』を出版した頃から、自ら野山を歩き植物を観察するようになり、来日したシーボルトらの影響などを受け、薬草以外の植物にも目を向ける植物学へと移行していきました。
 本セミナーでは、私たちには馴染みの薄い本草学が植物学にどのような影響をもたらしたのか、また本草学からは身近な植物と人との関わりについて考えます。講義に加え、標本室および東京大学総合研究博物館の常設展示室も見学します。

【実施プログラム】
■レクチャー本草学とその日本での歩み(講師:大場 秀章)
 シーボルトが興味を持った本草学とはどのようなものなのか。また本草学が
 植物学にどのように引き継がれているのか。そして、江戸時代の人と植物と
 の関わり方から、人と植物との共生を考えます。
■標本室(ハーバリウム)見学(講師:池田 博)
 東京大学植物標本室 (TI) には、およそ170万点の標本が収蔵されています。
 その中から、オランダから寄贈されたシーボルト関連の標本コレクション、
 新種を発表するときに使われたタイプ標本など、普段は目にすることのでき
 ない標本を見学します。
■標本整理作業見学
 植物標本ができ上がるまでには、採集→乾燥→ラベル作成→貼り付け→配架
 と、さまざまな工程があります。標本がつくられ、標本室に配架されるまで
 の過程について、現場をめぐりながら紹介します。また、標本のデジタ化・
 データベース化についても紹介します。
■常設展示室の見学
 東京大学総合研究博物館は、20165月に常設展示場をリニューアルし、
 「UMUT オープンラボ -太陽系から人類へ」としてオープンしました。
 東京大学が持つ膨大な資料を使い、現場に立つ研究者がどのように標本と
 接し、それらと「格闘」しているのかを、「研究現場展示」というコンセプ
 トを掲げ示そうというものです。

講師
大場 秀章(東京大学総合研究博物館特招研究員、東京大学名誉教授)
池田 博 (東京大学総合研究博物館准教授)

日時
2月24日(土) 
13時00分~17時00分

場所
東京大学総合研究博物館[〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1

募集人数
30名(最少実施人数20名)※申込先着順

参加費
友の会会員:2,000円 一般:2,500円

申込方法
友の会事務局までお申し込みください。※申込締切:2018年2月9日(金)

第75回体験セミナー 川とともに生きる―日本の鵜飼探訪第2弾 三次の鵜飼漁見学と広島県の民俗芸能に出会う

第75回川とともに生きる―日本の鵜飼探訪第2弾

三次の鵜飼漁見学と広島県の民俗芸能に出会う

2017年7月22日(土)、23日(日)

現在、日本では11カ所で鵜飼漁がおこなわれています。昨年は長良川鵜飼を訪れましたが、今年は広島県北西部に位置する三次市の鵜飼漁を見学します。  三次は、中国山地を横断して日本海に流れる江の川と、その支流である馬洗川、西城川の合流点に位置し、かつてより舟運や川漁など川と深い関わりをもつ仕事が多くみられました。鵜飼漁もそのひとつです。

三次の鵜飼は、漁のきまり、集団で鵜飼をおこなうときの舟のフォーメーションと操り方、舟の形状などに、鵜飼が生業として営まれてきた名残をみることができます。鵜飼舟は細長く、喫水が浅いため小回りが効きます。一方で、喫水が浅い舟は揺れやすく、舟上での鵜の扱いが難しいともいわれます。

こうした特徴をもつ三次の鵜飼は、平成27年に生業鵜飼の技術をいまに伝えることが評価され、広島県の無形民俗文化財に指定されました。本セミナーでは地理・歴史的背景とともに、生業として育まれてきた三次の鵜飼について理解を深めます。

あわせて、広島県の民俗芸能にも注目します。県内には、5つに大別される個性豊かな神楽に加え、農業とともに発展したはやし田など、興味深い民俗芸能が数多くあります。県内の関連施設を訪ねて芸能そのものに親しむとともに、地域と民俗芸能の関係、継承のあり方についても考える機会にしたいと思います。みなさん、ぜひご参加ください。

【7月22日】
※鵜飼を中心とするプログラム みよし風土記の丘ミュージアム(広島県立歴史民俗資料館)にてレクチャー、資料見学/鵜匠宅訪問/鵜飼漁見学

【7月23日】
※民俗芸能を中心とするプログラム みよし風土記の丘ミュージアムにてレクチャー、備後神楽「折敷舞」の実演鑑賞/芸北民俗芸能保存伝承館を見学/神楽門前湯治村にて芸北神楽鑑賞

第74回体験セミナー 遠山霜月祭見学 ─ 神と人が集う夜

第74回体験セミナー 遠山霜月祭見学 ─ 神と人が集う夜

2016年12月10日(土)、11日(日)

天竜川流域に位置する山深い土地、三河、信濃、遠州の三地域が接する一帯には、冬季におこなわれる、湯立てを組み込んだ祭が分布しています。遠山霜月祭もそのひとつで、冬至を迎え、一年でもっとも日照時間が短くなる霜月(旧暦一一月)に祭が執りおこなわれます。諸国の神々を招いて湯を献じ、自らもその湯を浴びて邪を払う――。神と人が夜を徹してともに集い、次の春も実り豊かな里になるよう願う祭、それが遠山霜月祭です。

現在遠山地域には、霜月祭をおこなう神社が10社あり、いずれも「禰宜」とよばれる民間の宗教者を中心とした村人たちが祭を担っています。祭場を整えて湯を立て、全国から招いた神々にその湯を献じたのち、地元の神々と遊んで(面の登場)、身を清めるという一連の流れがありますが、湯を立てる釜の数やつくり、笛や銅拍子の有無、面の数や種類など、細部は地域によって異なります。

第74回体験セミナーでは木沢系と上町系の本祭の一部を見学し、下栗系の祭に携わる方からお話をうかがいます。あわせて、祭を支える遠山郷の民俗や、一帯で300近い面を保有することを踏まえたうえで、仮面のもつ文化的な意味についても考えてみたいと思います。

【12月10日】
飯田市美術博物館見学・講師レクチャー/木沢正八幡神社の本祭(一部)に参加

【12月11日】
遠山郷土館見学/下栗拾五社大明神にて地元の方から話を聞く/上町正八幡宮の本祭(一部)に参加/まつり伝承館「天伯」見学

第73回体験セミナー 目と舌で知るネパール―映像鑑賞と国民食「ダール・バート」を手で食べる ─

第73回体験セミナー 目と舌で知るネパール―映像鑑賞と国民食「ダール・バート」を手で食べる ─

2016年9月30日(金)11時~15時

みんぱくが取材した映像番組を鑑賞しながら、ネパールの国民食「ダール・バート」をいただきます。

北海道の1.8倍ほどの面積のなかに、標高差の異なる自然環境と、多様な価値観をもつ人びとが暮らしを営むネパール。ことばや慣習もさることながら、食文化ももちろん多様です。そんななか「ダール・バート」は、「ダール(豆のスープ)」「タルカーリー(カレー風味のおかず)」「アチャール(漬物)」「バート(ご飯)」で構成され、味付け等に地域差はあれど、ネパール全域で食される、いわば国民食。食事の準備や食べ方、食材や調理/飲食の場、そしてとくに重要な衛生観念など、「食」を通して、ネパールの根底にある文化や価値観に迫ります。

映像は『山村の結婚式』(2013年撮影)、『ガイネ』(1982年撮影)を鑑賞します(「ガイネ」は現在「ガンダルバ」と呼ばれる元楽師カーストです)。婚姻儀礼と伝統楽器の演奏の在り方に着目し、「都市と地方」、「王制廃止以前と以降」といった地域的、時間的比較も踏まえながら、ネパール社会の変化・変容をさぐります。みなさん、ぜひご参加ださい。

※食事はフォーク等の用意もあります。