第322回 【特別展「『きのうよりワクワクしてきた。』ブリコラージュ・アート・ナウ日常の冒険者たち」関連】 ハラハラドキドキする展示ができあがるまで。

演題
【特別展「『きのうよりワクワクしてきた。』ブリコラージュ・アート・ナウ日常の冒険者たち」関連】
ハラハラドキドキする展示ができあがるまで。

内容
民族学者のレヴィ=ストロースは、ありあわせの材料を元になにかをなしとげようとする未開社会特有の思考法にブリコラージュという言葉をあたえました。何気なく見すごしていた身のまわりの世界をもういちど見直してみよう。そうすればきっと、毎日はスリリングな発見にみちているにちがいない。ブリコラージュな世界を目標にはじめられた展示場づくりのハラハラドキドキをそっとご紹介します。

※講演会終了後、見学会をおこないます。詳しくは「みんぱく見学会」欄をご覧ください。

講師
小山田 徹(美術家)
佐藤 浩司(特別展企画委員長・国立民族学博物館助教)

日時
2005年4月2日(土) 14時~15時10分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

第321回 自然と共生する文化(3) サンゴ礁の海から自然と文化の多様性をかんがえる

演題
自然と共生する文化(3)
サンゴ礁の海から自然と文化の多様性をかんがえる

内容
サンゴ礁は、多様な生き物を育む「豊かな海の世界」です。しかし、人間による攪乱や最近の海水温上昇によるサンゴの白化が進み、サンゴ礁の海は危機に瀕しています。貧困ゆえにサンゴを破壊して漁をおこなう人びとの生きざまから、私たちは何を学び、何をすべきか。東南アジア・太平洋の調査から海の未来をかんがえます。

講師
秋道 智彌(国立民族学博物館教授)

日時
2005年3月5日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

第45回体験セミナー からくり人形からみる世界の玩具 ─ ─有馬玩具博物館訪問

第45回体験セミナー からくり人形からみる世界の玩具 ─ ─有馬玩具博物館訪問

2005年3月27日(日)

淡路の人形浄瑠璃や明治時代に生まれた神戸人形など、からくり人形作りが発達した兵庫県において、2003年秋、有馬に世界の玩具を集めた「有馬玩具博物館」が開館しました。講師に橋爪紳也先生を迎え、館長であり人形作家の西田明夫氏にからくり人形をはじめとする世界の玩具、また有馬と玩具との関わりについてお聞きします。

昼食は老舗旅館「御所坊」が経営する博物館内の「花居森」にて花見弁当をいただき、オーナーの金井啓修氏から人形を軸とした有馬の町づくりについてお話をうかがいます。

第74回 連続講演会「文化人類学の社会的活用」(2) 病・老い・死への現代的対応

演題
連続講演会「文化人類学の社会的活用」(2)
病・老い・死への現代的対応

内容
日本人の多くが抱く最も大きな関心ないしは懸念は、個人的なことに限ると、自身の病気や老いやさらに死に際において、誰がどの様に関わってくれるのか、自身はその際どの様な状況におかれるのかということであろう。そのような懸念或いは不安は何時の時代にでもあったが、現代的な問題としては、日本における家族の様相が大きく変貌し、或いは変貌しつつあることの認識が広がっているのに、家族に代わる組織或いは制度が発達していないこと、また病気や老いや死に関わる個人の危機的状況に対応するのに、近代化以後も、日本においては家族に大きく依存していたことが、今日の日本人の不安や懸念を大きくしていると考えられる。社会福祉の充実は一つの対応策であるにしても、個人の不安を拭うことはできない。

文化人類学或いは民族学は、多様な文化、社会の中で人類が多様な適応をしてきたことを考えるとき、現代日本における、家族の変貌と個人の人生との関わりにおける新たな展望を模索するヒントを与えうると考える。

講師
波平 恵美子(お茶の水女子大学教授)

日時
2005年3月13日(日) 14時~15時30分

場所
東京芸術劇場5階 大会議室

定員
112名(申込先着順)

備考
■友の会会員:無料

112号 2005年 春


バテッの少女
文/写真・阿部 健一

特集 生物の多様性、文化多様性

近年、生物多様性を持続させるためには文化の側面を考慮に入れるべきだという見方がひろまりつつある。生物と文化の多様性について、世界的な共通認識を構築するために、アジア、オセアニア、そして日本における人類学的、生物学的事例から考える

多様性に、人類学的祝福を 地域で考える自然と文化 阿部 健一
現代の貧困とは、グローバリゼーションによるさまざまな多様性の喪失である。多様なものがぶつかりあい、触発しあい、そこからあらたな創造が生まれる。多様性こそ創造の源泉である。人類と生物にとっての、真のゆたかさの意味を問い直したい

熱帯魚の海 秋道 智彌
水族館だけでなく、一般家庭でも飼育されるようになった熱帯魚。その美しさと可愛さゆえに人びとを魅了し、みる人をはるかなサンゴ礁の海へと誘う。わたしたちが水槽のガラスごしに観賞する魚。その魚を漁民たちはどのような思いで獲っているのだろうか。商品化によって、魚は大切な食料から貴重な収入源へと変わった。熱帯の海で起こっている人と生態系の変貌とは

一様化してゆく日本の食 佐藤 洋一郎
「デパ地下」の食材をみていると、現代日本はグルメブームの究極にあるといって過言ではない。しかし、それは世界じゅうの食材を買い漁った結果であり、日本の土地で生産される食材の数はどんどん減ってきている。家庭で消費される食材も、ここ何十年かのあいだにどんどん失われてきた。日本の食はどこにいくのか、食と大地とのかかわりを考える

漆と工芸品 日高 真吾・土村 清治
南蛮貿易において、ヨーロッパ人好みの装飾を施し、盛んに輸出された日本の漆器。江戸時代には簡略化した漆工技術が廉価な日用什器を生み、ひろく親しまれた。漆工品は芸術品であり、実用品である。とかく芸術的な面だけに目がゆきがちな工芸の世界だが、ひとつの産業であることを忘れてはいけない。海の向こうに原材料のおおくを求めざるをえない今日、伝統の技術はいかに受け継がれてゆくのか

ムアンの歳時記 第2回
春を告げる嵐

樫永 真佐夫
イラスト・栗岡 奈美恵

東南アジア北部の山あいでの話。タイ系民族の人びとは、米を作っている盆地世界それぞれをムアンとよんできた。かつて日本兵も遊んだムアン・クアイの山で、村びとたちは焼畑をひらき、掘り棒を使って植え付ける。夜半には雷雨が春を告げる。若者には恋の予感も__ギエップ村の暮らしを伝えるシリーズ第2回

民族文学の父クロイツヴァルトとエストニア人
未来を信じる力を与えるもの

小森 宏美

19世紀、エストニアの人びとのアイデンティティ形成に力をつくした啓蒙運動家クロイツヴァルト。彼の作品が民族覚醒の時代や独立戦争をへて、いまなお読み継がれる理由はどこにあるのか

クメールの伝統織物

写真・大村次郷

インドシナ半島では、イカットとよばれる絣織の技術がうけ継がれてきた。糸をしばって染色し、織りとする技法である。カンボジアの風土から生まれた黄金色の繭。紡がれた糸は自然の染料で染められ、優美な文様の布に織り上げられる。内戦で途絶えかかった伝統の技法は、いま復興へと動きだした

東南アジア織物文化におけるカンボジア チャム・マレー人の技術を中心に 岩永 悦子
精密な括り技術、発色と文様の美しさで、カンボジアの絹緯絣はアジアの絣でも群を抜く。クメール人によって受け継がれ、高められた染織技術。その絣の最高傑作のなかに、ごくまれにイスラーム的モティーフが登場する。イスラーム化した少数民族マレー系チャム人たちの優れた技術によるものである

次代につなぐ、営みとしての染めと織り 伝統の知恵を育む森の再生 森本 喜久男
カンボジア文化の至宝、古代寺院アンコール・ワット。壮大な石造伽藍がそびえ立つ古都シャムレアップの町で、いまクメール伝統織物が復興されている。技術の伝承だけでなく、素材となる木や植物を植え、森をつくり、そこで働く女性たちの自立をめざす。自然と人が一体となった「再生」のプロジェクトである