第83回 民族学研修の旅 ベトナム西北部 少数民族の世界へ ─

第83回 民族学研修の旅 ベトナム西北部 少数民族の世界へ ─

2013年11月21日(木)~29日(金)

【盆地、山地にくらす少数民族】
あまり知られていませんが、ベトナムは54民族からなる多民族国家です。紅(ルビ:ホン)河デルタの中心に多数民族のキン族(ベト族)によって築かれた都ハノイから山に向かって100キロいかないうちに、少数民族の世界にはいります。それぞれの民族がそれぞれの社会的、政治的事情により、それぞれ独自の文化を歴史的につくりあげてきました。山を越え、谷をわたり、棚田が広がる美しい景観を楽しみながら旅ゆけば、ムオン、ターイ(白タイ、黒タイ)という盆地民、モン(赤モン、青モン)、ルー、ザオなどの山地民など、じつに多くの民族の人びとと出会えるでしょう。

【白タイの村のくらしを体験】
マイチャウでは白タイの村を訪ねます。村は水田が広がる美しい盆地にあります。同行講師の知人らが、現地式の宴会で私たちをもてなしてくださいます。村の人たちが囲炉裏でつくるおこわや民族料理、伝統的な壺酒(米の発酵酒)などをいただきます。村の高床式家屋に宿泊し、実際の住まいも体験できる予定です。

【市場でフィールドワーク】
朝夕の市場は活気があり、さまざまな珍しい現地の物産が売られているだけでなく、華やかな民族衣装をまとった少数民族に出会えるのも楽しみの一つです。観光地の市場は最近の観光化に伴い変化してきましたが、今回は村の人たちがふだん買い物をするような小規模な市場にもできるだけ立ち寄る予定です。民族によって顔つき、表情、身ぶり、売り方も違っていたりするので、人々のやりとりのようすもじっくり観察してみてください。ハノイやソンラーでは民族に関する博物館も訪ねますが、フィールドワーカーとして旅を楽しみましょう。

この時期のベトナム西北部はとても過ごしやすい気候です。山地民のモン族のガイドさんと棚田散策を楽しむ機会もあります。美しい景色、そしておいしい食べ物も楽しみましょう。運良く雲も月もない夜は、満天の星空が楽しめることでしょう。

ぜひご参加ください。


第83回 ベトナム西北部 少数民族の世界へ- 実施報告

2013年11月21日~29日 9日間の日程で、ベトナム西北部の少数民族の村を訪ねる民族学研修の旅を実施しました。 あちこちでバスをとめ、民家や市場をいくつも訪ねました。 それぞれの村でのお食事もおいしくて、みんないつでもお腹いっぱい状態でした。 参加者の中には植物に詳しい方も多く、植物談義も盛り上がりました。 また、白タイ族の村では高床住居にも泊まりました。 谷間に広がる棚田。 火がついている焼き畑。 鶏や豚が村を走り回り、水牛は夜になると自ら小屋に帰ってくる・・・ 動物と人間の距離がとても近くて、村でも市場でも動物、人が”生きている”というエネルギーを強く感じました。
参加者の感想をご紹介します。

佐藤芳郎さん
いろいろなところでバスをとめ、民家、風習の説明をうけ、つぶさに少数民族の実生活をみて、充実感をいだいた。

池谷正子さん
ベトナムの北西部=山地=不便=へき地と思っていましたので、アスファルトの道路に街並みという街の風景に驚きました。また、モン族、黒タイ族、ザオ族の家屋の中に入り、生活の様子を見聞することができたことはすばらしい経験でした。講師のフィールドワークの緻密さ、的確さに感謝すると同時にその知識を伝えてくださるこまかい配慮と、よく練られた行程に本当に満足する良い旅でした。

寺田一雄さん
北ベトナム少数民族の旅は2度目でしたが、講師や現地ガイドの丁寧な説明で、住居、生活、民具など、より詳しく見学でき、良かったです。この民博の研修旅行はこれ以上に考えられない旅行で、また参加したいです。


棚田と焼き畑


黒モン族の家を訪問


市場で購入した子豚を竹カゴに入れて持ちかえるモン族の女性


手すき紙を干しているところ

第424回 特別展「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館」関連 渋沢敬三の「民具」へのこだわり

演題
特別展「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館」関連
渋沢敬三の「民具」へのこだわり

内容
アチックミューゼアムの設立者、渋沢敬三は日本銀行総裁や大蔵大臣をつとめる一方、膨大な量の民俗資料を収集し、毎朝、出勤前の2時間を民俗学の研究にあてるなど、地道な研究をおこなう学者、文化人としても熱心に活動していました。民具という考え方を提唱したのも渋沢敬三でした。彼がそれほどまでに民俗学に傾倒した事情や社会的背景などについてお話します。

※講演会終了後に見学会をおこないます。(1時間程度)

講師
小島 摩文(鹿児島純心女子大学教授)

日時
2013年10月5日(土) 14時~15時

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

146号 2013年 秋

機関誌
自然布の里、木頭
藤森武

特集 暮らしの節目と自然の節目

収穫期をむかえた棚田。
この風景は、自然を征服せずありのままの環境を受け入れ工夫してきた古来の営み、自然のサイクルにそうことで得られる作物の恵み、さらに、それを背景に生まれた伝統文化など、人と自然とのかかわりについて多くのことを物語ってくれる。今年五月、出雲大社では60年ぶりの遷宮が執りおこなわれ、伊勢の神宮では20年に一度の式年遷宮が10月に執りおこなわれた。2013年はカミサマとそれにかかわる人びとにとって節目の年といえるだろう。もともと、我われの暮らしには、年中行事や人生儀礼など、さまざまな「節目」が存在する。それら節目には、その時期でなければならない、あるいはそれを必要とする何らかの意味があるにちがいない。そしてその背景には、暮らしとともにある自然の節目が大きく関係しているのではないだろうか。

暮らしに息づく聖なるサイクル  鎌田東二

強い時間としての節目  中牧弘允

神宮式年遷宮と御杣山  木村政生

20年に1度 播磨国総社の三ツ山大祭  小栗栖健治

衛星データがつなぐ時空間  中野不二男

4年周期のオリンピアード  真田久

重層する時間―カザフ草原の牧畜と信仰のリズム  藤本透子

希望をのせ再開した三陸鉄道

鎌澤久也 天高く汽笛を鳴らしながら、三両編成の列車がゆっくりとホームに入ってきた。二年間待ちに待った瞬間だ。沿線の三陸駅では地元の人びとが太鼓を叩いて喜び、赤い半纏を着て祝いの餅をついたり、大漁旗でつくったお揃いの長半纏を着たり、さらには小旗を振るなど、思い思いのスタイルでこの瞬間をむかえた。わずかの停車時間に乗車し、満面の笑みで紅白の餅を乗客に配っている女性もいる。その笑顔を見ているとこちらまで嬉しくなる。

世界をさわる 第5回
タッチカービングによる物指し鳥

私たちは日常において、視覚と聴覚に頼って情報を取り込むことが多い。日常生活にとどまらず、博物館や美術館という鑑賞・学習の現場でも「見学」「観覧」といった視覚中心の鑑賞方法が提示されることが多い。しかし、ものの本質を知る手段は、視覚や聴覚に限るのだろうか。本連載では、五感のうちでもとくに「さわる」行為に着目し、「見える」「聞こえる」という常識にとらわれない、あらゆる角度から対象を理解する〝手法〟を提案したい。「さわる」行為には、世界を知るためのさまざまな可能性が秘められている。

密着取材から接触映像へ  広瀬浩二郎

タッチカービングによる物指し鳥  内山春雄

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【地域(国)】
西アジア(カザフスタン)
東アジア(日本)

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【執筆者(五十音順。肩書は発行当時のもの)】
内山 春雄(うちやま はるお 野鳥彫刻家)
小栗栖 健治(おぐりす けんじ 兵庫県立歴史博物館館長補佐)
鎌澤 久也(かまざわ きゅうや 写真家)
鎌田 東二(かまた とうじ 京都大学こころの未来センター教授)
木村 政生(きむら まさお 前神宮司庁営林部長、林学博士)
真田 久(さなだ ひさし 筑波大学体育系教授)
中野 不二男(なかの ふじお 京都大学宇宙総合学研究ユニット特任教授)
中牧 弘允(なかまき ひろちか 吹田市立博物館館長、国立民族学博物館名誉教授)
広瀬 浩二郎(ひろせ こうじろう 国立民族学博物館准教授)
藤本 透子(ふじもと とうこ 国立民族学博物館助教)
藤森 武(ふじもり たけし 写真家)

第423回 みんぱくコレクションを語る カチーナ人形の作り手たち ─40年後の「もの語り」の可能性

演題
みんぱくコレクションを語る
カチーナ人形の作り手たち ─40年後の「もの語り」の可能性

内容
カチーナ人形はアメリカ先住民のホピの人びとが儀礼で用いる木製の人形です。みんぱくは1980年前後に283点を収集しましたが、資料情報がたいへん限られている状態です。人形の台座に記されたサインを手がかりに、制作者本人や親族を探し出すことができたので、将来的にはインタビュー調査を行う予定です。人形資料を介した「もの語り」の可能性についてお話します。

※講演会終了後に懇談会をおこないます。(1時間程度)

講師
伊藤 敦規(国立民族学博物館助教)

日時
2013年9月7日(土) 14時~15時

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料