146号 2013年 秋

機関誌
自然布の里、木頭
藤森武

特集 暮らしの節目と自然の節目

収穫期をむかえた棚田。
この風景は、自然を征服せずありのままの環境を受け入れ工夫してきた古来の営み、自然のサイクルにそうことで得られる作物の恵み、さらに、それを背景に生まれた伝統文化など、人と自然とのかかわりについて多くのことを物語ってくれる。今年五月、出雲大社では60年ぶりの遷宮が執りおこなわれ、伊勢の神宮では20年に一度の式年遷宮が10月に執りおこなわれた。2013年はカミサマとそれにかかわる人びとにとって節目の年といえるだろう。もともと、我われの暮らしには、年中行事や人生儀礼など、さまざまな「節目」が存在する。それら節目には、その時期でなければならない、あるいはそれを必要とする何らかの意味があるにちがいない。そしてその背景には、暮らしとともにある自然の節目が大きく関係しているのではないだろうか。

暮らしに息づく聖なるサイクル  鎌田東二

強い時間としての節目  中牧弘允

神宮式年遷宮と御杣山  木村政生

20年に1度 播磨国総社の三ツ山大祭  小栗栖健治

衛星データがつなぐ時空間  中野不二男

4年周期のオリンピアード  真田久

重層する時間―カザフ草原の牧畜と信仰のリズム  藤本透子

希望をのせ再開した三陸鉄道

鎌澤久也 天高く汽笛を鳴らしながら、三両編成の列車がゆっくりとホームに入ってきた。二年間待ちに待った瞬間だ。沿線の三陸駅では地元の人びとが太鼓を叩いて喜び、赤い半纏を着て祝いの餅をついたり、大漁旗でつくったお揃いの長半纏を着たり、さらには小旗を振るなど、思い思いのスタイルでこの瞬間をむかえた。わずかの停車時間に乗車し、満面の笑みで紅白の餅を乗客に配っている女性もいる。その笑顔を見ているとこちらまで嬉しくなる。

世界をさわる 第5回
タッチカービングによる物指し鳥

私たちは日常において、視覚と聴覚に頼って情報を取り込むことが多い。日常生活にとどまらず、博物館や美術館という鑑賞・学習の現場でも「見学」「観覧」といった視覚中心の鑑賞方法が提示されることが多い。しかし、ものの本質を知る手段は、視覚や聴覚に限るのだろうか。本連載では、五感のうちでもとくに「さわる」行為に着目し、「見える」「聞こえる」という常識にとらわれない、あらゆる角度から対象を理解する〝手法〟を提案したい。「さわる」行為には、世界を知るためのさまざまな可能性が秘められている。

密着取材から接触映像へ  広瀬浩二郎

タッチカービングによる物指し鳥  内山春雄

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【地域(国)】
西アジア(カザフスタン)
東アジア(日本)

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【執筆者(五十音順。肩書は発行当時のもの)】
内山 春雄(うちやま はるお 野鳥彫刻家)
小栗栖 健治(おぐりす けんじ 兵庫県立歴史博物館館長補佐)
鎌澤 久也(かまざわ きゅうや 写真家)
鎌田 東二(かまた とうじ 京都大学こころの未来センター教授)
木村 政生(きむら まさお 前神宮司庁営林部長、林学博士)
真田 久(さなだ ひさし 筑波大学体育系教授)
中野 不二男(なかの ふじお 京都大学宇宙総合学研究ユニット特任教授)
中牧 弘允(なかまき ひろちか 吹田市立博物館館長、国立民族学博物館名誉教授)
広瀬 浩二郎(ひろせ こうじろう 国立民族学博物館准教授)
藤本 透子(ふじもと とうこ 国立民族学博物館助教)
藤森 武(ふじもり たけし 写真家)