第38回比較文明学会大会(終了しました)

第38回比較文明学会大会

「いのち」をめぐる文明的課題の解決に向けて

チラシイメージ本大会は1970年大阪万博50周年と梅棹忠夫生誕100年という節目に開催されます。2025年の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ですが、梅棹らが構想した「人類の進歩と調和」という理念がいかに継承されうるかを問う絶好の機会でもあります。くわえて、新型コロナウイルスがパンデミックとなり、人類社会の存続を脅かしています。つまり、「いのち」にかかわる重大な文明的課題が急浮上しているのです。そのため、「『いのち』をめぐる文明的課題の解決に向けて」という統一テーマで国際シンポジウムを開催します。コロナ禍により開催の方式はシンポジウムも個人研究発表も基本的にオンラインですが、会場でも少人数の参加が可能です。
当日プログラムはこちら

開催日:2020年11月21日(土)・22日(日)・23日(月・祝)

会場:国立民族学博物館・オンライン

主催:比較文明学会国立民族学博物館・千里文化財団

助成:公益財団法人 関西・大阪21世紀協会

参加申込要項:
比較文明学会会員でない一般の方で、本シンポジウムに参加希望の方は、下記申し込み先メールアドレス宛に、メールタイトルを「比較文明学会参加希望」として、本文に、(1)氏名(2)郵便番号(3)住所(4)電話番号(5)メールアドレス(6)参加希望形態(Aオンライン参加・B会場参加)を記入してお申し込みください。折返し、参加費(資料代500円)のお振り込み先を返信いたします。

申し込み先メールアドレス:hikakubunmei2020@minpaku.ac.jp

申し込み締切り:2020年10月末日 ※締め切りました。

オンライン参加、会場参加とも可能定員がございます。申し込みが可能定員を超えた場合、参加をお断りする場合がございますので、あらかじめご了承ください。

理事長徒然草(第10話)
「『千里眼』150号記念号に寄せて」

6月25日に刊行された同人誌『千里眼』(発行所:千里文化財団)が150号の節目をむかえました。本誌は年4回の季刊誌で、創刊は1983年3月です。発起人には梅棹忠夫初代民博館長以下、小林公平、小松左京、里井達三良など9名の錚々たるメンバーがならんでいます。同人規定には「広域千里(北摂7市3町)に住所、仕事場、その他の関係をもつ知識人」とあり、「同人のご友人で千里のいろいろなところに親しみをもっている方」とあります。内容は随想、論説、小説、詩、紀行、身辺雑記等なんでもよく、写真や絵も可で、投稿されたものをそのままのせるという原則をまもっています。趣意書の最後には「この雑誌が、成熟したおとなの悠然たる風格をもったものになればさいわいである」とむすばれています。

「千里眼」という名称は梅棹先生のアイデアです。千里丘陵とかけていることは言うまでもありません。「文章のカラオケ」というのも梅棹先生ならではの発想です。他人に読ませる原稿ではなく、好きなことを自分のために書く、というのが本誌の良さです。そのための会費は年間10万円でしたが、いまはその半額になっています。千里眼表紙画像

現在の会員数は50名です。150号記念号に寄せて短文を書いた会員が18名。通常どおりに寄稿した人が23名です。かつての同人には弔辞以外、本誌には文章を書いていない司馬遼太郎さんがいましたし、山下俊彦さんや能村龍太郎さんなどの財界人も多数ふくまれていました。またジャーナリスト、医師、弁護士、アーティストなどアカデミズム以外の方がたも多士済々でした。いまでも名簿をみると千里ゆかりの「知識人」がキラ星のごとく名をつらねています。

本号で同人の一人は「おそらく千里眼は後世の歴史家にとって、格好の研究資料になるに違いない」と予言しています。なぜなら、現代の有識人が率直な意見を述べ、感性や生活感覚をともなった実像が赤裸々につづられているからだといいます。それは「その人が生きた時代の写し鏡」であり、「時代の証言の記録」でもあって、記録メディアとしての『千里眼』の価値は永続するというのです。たんなる「文章のカラオケ」が「時代の証言」になるとは、おそれおおいことになってきました。

わたし自身は、『千里眼』に投稿した11回の連載「梅棹忠夫の『日本人の宗教』」(137号~147号)をもとに同名の単行本をこの5月に淡交社から出版することができました。おおくの同人もまた『千里眼』の記事を活用してさまざまな書物にまとめています。梅棹先生の『夜はまだあけぬか』(講談社、1989年)や『裏がえしの自伝』(講談社、1992年)もまた『千里眼』の副産物です。事務局で把握している出版物にかぎっても40点をかぞえます。

きわめて個人的な事柄が人類の歴史にどう生かされるのか、なんとも予想がつきませんが、すくなくとも37年の歴史を蓄積してきた本誌が末ながく発展的に継続されることをねがってやみません。(2020年7月6日)

「驚異と怪異」の巡回展開催

特別展「驚異と怪異――モンスターたちは告げる」

開催期間:2020年4月25日(土)~ 6月14日(日)
※ 会期が次のとおり変更になります。
変更後 令和2年(2020)6月23日(火)~8月16日(日)

会  場:兵庫県立歴史博物館 ギャラリー

ヨーロッパや中東においては、犬頭人、一角獣といった不可思議ではあるが実在するかもしれない「驚異」は、神の偉大な力を示すものととらえられ、自然に関する知識の一部として伝えられました。また、東アジアにおいては、流星や異形の生き物の誕生など、通常とは異なる現象は、天や神仏からの警告である「怪異」としてとらえられ、歴史書のなかに記録されました。
本展では、国立民族学博物館所蔵の民族資料を中心に、人魚、竜、怪鳥、一角獣など、さまざまな世界の想像上の生き物について紹介するとともに、警告・凶兆(モンストルム)を語源とする怪物(モンスター)の文化史的な意味について考えてみます。

開催概要はこちら

理事長徒然草(第9話)
「元理事立石義雄氏を悼む」

新型コロナウイルスの流行により4月7日には緊急事態宣言がだされました。民博も臨時休館の延長を余儀なくされ、春の特別展「先住民の宝」は準備が完了しているにもかかわらず、秋頃への延期となりました。4月23日の開幕予定だった企画展「知的生産のフロンティア」にも同様の措置がとられています。友の会の活動も極度に制限され、講演会や研修の旅は実施を自粛しております。

そうしたなか、当財団の理事を長くつとめてくださった立石義雄氏が4月21日、コロナ禍により急逝されました。80歳でした。謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈り申しあげます。立石氏は自社オムロンの経営だけでなく、京都商工会議所の会頭としても関西財界に重きをなしておられました。また文化人としての顔をもち、当財団にも暖かい支援の手を差し伸べてくださいました。

オムロンは創業者の立石一真氏(義雄氏の父)が提唱したSINIC理論(Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution)で知られています。これは1970年に京都国際会議場で開催された国際未来学会で発表された理論です。未来社会を予測するモデルであり、科学と技術と社会のあいだには円環的な関係があり、相互にインパクトをあたえあっているというものです。

参照:SINIC理論(オムロン ウェブサイト内)

国際未来学会の大会は創立まもない日本未来学会が主催した国際会議ですが、「万国博をかんがえる会」とおなじメンバーが立ち上げた「未来学研究会」が発端になっています。なかでも林雄二郎氏と加藤秀俊氏がその立役者として活躍し、大阪万博の年に実現させています。そこに京都財界の新星、立石一真氏が参画していくという構図です。このあたりの事情は、『季刊民族学』の最新号(172号)にある「インタビュー:加藤秀俊氏に聞く1970年前後の梅棹忠夫」をご覧ください。

オムロンといえば、駅の自動改札機でも有名です。日本初、いや世界初の自動改札機は阪急千里線の北千里駅に登場しました。1967年のことです。科学と技術と社会の相関関係をかんがえる格好の材料かもしれません。(2020年4月26日)

理事長徒然草(第8話)
「梅棹忠夫先生の生誕100年をむかえて」

 新型コロナウイルスの影響で世の中から活気が失われています。民博も3月いっぱい休館となり、当財団の運営するミュージアムショップもほぼ休業の状態です。何か明るい話題はないでしょうか。

 ひとつは、本年が梅棹忠夫先生の生誕100年にあたっていることです。民博では企画展「知的生産のフロンティア」(2020年4月23日~6月23日)が予定され、今のところ延期されてはいません。「知的生産」とは言うまでもなく梅棹先生のベストセラーにしてロングセラーの『知的生産の技術』(岩波新書、1969年)に由来しています。企画展では東南アジア紀行までのアーカイブズが紹介されるそうです

 梅棹先生にはもうひとつのロングセラーがあります。梅棹先生の名を世に知らしめた『文明の生態史観』(中央公論社、1967年)です。これは梅棹文明学の金字塔であり、1983年の比較文明学会創立にもつながっています。2006年に開催された大手前大学の大会ではシンポジウム「文明史観を考える」が企画されました。そこには梅棹先生も参加され、「50年前に文明史観の種をまいて、こうして議論されて、いまここに花が咲いた」とコメントし、「いま、日常あんまりない、幸福感を感じております」と感慨を吐露されました。

 もうひとつ、今年は70年大阪万博の50周年にもあたってます。梅棹先生と大阪万博との関係は小松左京さんや加藤秀俊先生らとたちあげた「万国博をかんがえる会」にはじまります。その会で大阪万博の基本理念が練りあげられたことは万博研究者の間で知らない人はいません。いま読んでも色あせないその文章は、文明学的知見と未来学的展望に満ちあふれています。

 「アジアにおける最初の万国博覧会を人類文明史にとって意味あるものであらしめたい。すなわち、現代文明の到達点の指標であると同時に、未来の人類のよりよき生活をひらくための転回点としたいのである。」

 しかしながら、現状はおおくの不調和になやんでいて、解決すべき問題が多いと指摘され、人類の未来の繁栄をひらきうる知恵の存在に期待する旨が述べられます。そして、それをつぎの世代につたえるべく場所と機会を提供するのが大阪万博であると結んでいます。

 次号の『季刊民族学』は民博企画展に合わせて梅棹特集となります。その冒頭をかざるインタビューには今でもお元気な加藤秀俊先生が登場します。どうぞご期待ください。

 11月21日から23日の三連休には比較文明学会の大会が民博で開催され、当財団も主催者のひとつに名を連ねています。そこでは2025年の大阪・関西万博に向けて、そのテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」をめぐる国際シンポジウムが3つ組まれています。こちらも今から予定に入れておいてもらえれば幸いです。

 二つの記念すべきことが重なった本年、はからずもパンデミックになった新種の感染症で出鼻をくじかれましたが、社会的・組織的な意味での免疫抗体をつくるには絶好の機会かもしれません。災い転じて福となす、その気概で当財団も事に当たっていきたいとおもいます。皆さま方の変わらぬご理解とご支援をおねがいする次第です。(2020年3月12日)