理事長徒然草(第14話)
「川田順造先生の文化勲章と石毛直道先生の文化功労者のご顕彰を祝して」

このたび川田順造先生が文化勲章、石毛直道先生が文化功労者の栄に浴されることになりました。文化人類学にとっては二重のよろこびです。選出理由は川田先生が「西アフリカの無文字社会の調査から『口頭伝承論』という研究領域を開拓した」ことであり、石毛先生の場合は「文化人類学の分野において食文化研究という新たな領域を切り開いた」ことに対するものでした。口頭伝承論にしろ、食文化研究にしろ、いずれも新規の研究領域を開拓したことにあり、フィールドワークを重視する文化人類学として面目躍如たるものがあります。

開拓者精神は、もちろんそれ以外の分野にもおよんでいます。川田先生は「文化の三角測量」という、フランス、アフリカ、日本を定点観測するユニークな方法論を提示しています。他方、石毛先生も環境論・住居論から民間信仰論に至るまで数々のモデルを提唱しています。両先生がこれまでに受賞した賞がそれを如実に表わしています。

両先生はともに愛飲家でもありますが、もう一つ共通点があります。それは文章の達人と言ってもいいほどに、明瞭でわかりやすく、説得力があるだけでなく、人柄がにじみ出るような達意の表現をされることです。教科書などに取り上げられた回数は枚挙に暇がありません。

両先生が今後もますますお元気でご活躍されるとともに、後進のものたちも同様の開拓者精神をもって文化人類学の諸分野を切り開いていければと願っています。

このたびのご受章、誠におめでとうございました。 (2021年10月27日)

日本万国博覧会記念公園シンポジウム2021 「人類・いのち・万博-1970から2025に向けて」

本催しは事前予約制です。末尾記載の受付フォームよりお申し込みください。

日本万国博覧会記念公園シンポジウム2021
「人類・いのち・万博-1970から2025に向けて」

大阪万博(EXPO’70)開催から50年の節目にあたった2020年は、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、世界が一変し、人類が未知の脅威に立ち向かう年になりました。EXPO’70が生み出したレガシーである万博記念公園と国立民族学博物館が協働してシンポジウムを開催します。、「人類の進歩と調和」をテーマとしたEXPO’70から、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとしたEXPO 2025への展開をふまえ、「人類・いのち・万博」をテーマに、EXPO 2025、さらにその先の未来について議論します。

チラシ表面 チラシ裏面

開催日
2021年11月23日(火・祝)
13時~16時40分(12時30分開場)

会場
国立民族学博物館 本館 インテリジェントホール(講堂)
※要事前申込先着順、無料(会場参加は要展示観覧券)

参加方法
①会場でのご参加(定員160名)
②オンライン(ライブ中継)でのご参加

一般受付期間
2021年10月1日(金)~11月16日(火)

プログラム
13:00  主催者挨拶:中牧弘允(千里文化財団理事長)
13:10  シンポジウム開催にあたって:吉田憲司(国立民族学博物館長)
13:40  提言1)すべての「いのち」が輝く社会実現への共創活動:西尾章治郎(大阪大学総長)
14:00  提言2)万博におけるアフリカ表象:ウスビ・サコ(京都精華大学学長)
14:20  提言3)人類の進化といのちのつながり:山極壽一(総合地球環境学研究所所長)
14:40  提言4)オリンピックと万国博:井上章一(国際日本文化研究センター所長)
15:00  休憩(10分間)
15:10  パネルディスカッション:ファシリテーター:吉田憲司(国立民族学博物館長)
16:40  閉幕

※新型コロナウイルス蔓延の状況、ならびに都合により、当日プログラムを変更する場合が
ありますので、あらかじめご了承ください。

主催:公益財団法人千里文化財団
共催:国立民族学博物館、大阪府、
   公益財団法人関西・大阪21世紀協会
後援:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
協力:大阪モノレール株式会社、
   万博記念公園マネジメント・パートナーズ


11月23日のシンポジウムに参加ご希望の方は下記内容を入力してください。必須項目は必ず入力してください(一両日中に返信がない場合はご連絡ください。


    内容確認画面

    よろしければ「確認済」にチェックを入れ、「送信」ボタンを押してください。送信が完了すると受付フォーム最上部に完了通知が表示されます。


    公益財団法人への移行にともなうお知らせ

    千里文化財団は内閣府より公益認定を受けて、2021年4月1日から公益財団法人となり、正式名称が「公益財団法人 千里文化財団」となりました。
    この移行にともない、千里文化財団は寄附金優遇税制の対象となる「特定公益増進法人」に該当するとともに、また、2021年9月10日からは税額控除の対象法人になりました。それにより国立民族学博物館友の会の維持会員・正会員の会費ならびに千里文化財団への寄附は税制優遇措置を受けることができます。

    国立民族学博物館友の会の維持会員および正会員の会費は寄附金として、以下の税制優遇の対象となりますのでお知らせいたします。

    個人の方への優遇措置について

    (a)所得税(国税)について
    個人がお支払いになった会費は、確定申告時に、以下の(1)所得控除、(2)税額控除のいずれかの方式で、所得税の優遇措置を受けることができます(税金が安くなる可能性があります)。
    1) 寄附金(会費)の所得控除
    医療費控除などと同じように、年間の寄附金や会費の総額(当財団以外への寄附等も含めて)から2,000円を引いた額を所得金額から控除できる制度です。
    2) 寄附金(会費)の税額控除(公益財団法人等寄附金特別控除)
    年間の寄付金や会費の総額から2,000円を引いた額の40%を所得税額から控除できる制度です。ただし控除上限があります。
    (1)の場合は、確定申告時に当財団発行の「会費領収証」が必要となります。(2)の場合は領収証に加えて内閣府発行の「税額控除証明書の写し」が必要となります。※「税額控除証明書の写し」はこちらよりダウンロードいただけます。
    なお、勤務先などで実施される年末調整のみでは、寄附金控除は適用されませんので、確定申告の手続きが必要です。お手続きに関する詳細は、税務署や税理士などにお問い合わせください。

    (b)住民税(地方税)について
    都道府県や市区町村が、条例で当財団を税額控除の対象としている場合、寄附(会費)金額から2,000円を差し引き、次の割合を乗じた額について税額控除されます。条例で対象としているかどうかは、当財団の所在地ではなく、みなさまがお住まいの都道府県・市区町村にお問い合わせください。
    ア)都道府県が条例で指定した寄附金 4%
    イ)市区町村が条例で指定した寄附金 6%
    県市ともに指定していれば合わせて10%の控除が受けられます。なお、(a)の所得税の確定申告をおこなえば、地方税の申告も同時におこなわれますので、地方税の申告は不要です。お手続きに関する詳細は、税務署や税理士などにお問い合わせください。

    (c)相続税について
    相続により受け継いだ財産について一部を寄附していただくと、寄付していただいた金額に対しては相続税が課税されません。なお、非課税とはならない場合もあります。お手続きに関する詳細は、税務署や税理士などにお問い合わせください。


    法人の方への優遇措置について

    当財団への寄附金や、維持会費及び正会員の会費は、税制上の優遇措置の対象となります。お手続きに関する詳細は、税務署や税理士などにお問い合わせください。

    理事長徒然草(第13話)
    「アイヌ文化と和人文化―国立アイヌ民族博物館のビーズ展に寄せて」

     国立アイヌ民族博物館が昨年(2020年)白老町に開館し、このたび第3回特別展示「ビーズ アイヌモシリから世界へ」(以下、「ビーズ展」 なお、副題のアイヌモシリの「リ」の字は、本来は小文字表記)が10月2日に開幕しました。この展示は国立民族学博物館の巡回展でもあり、千里文化財団が両館をつなぐ関係で主催者に名を連ねています(写真1、2)。実際に担当したのは資料の選定や移動、演示などへの支援・協力です。いわば「縁の下の力持ち」のような役割ですが、ビーズの巡回展としては2度目になります。初回は2018年秋に岡山市立オリエント美術館でひらかれた特別展「国立民族学博物館コレクション『ビーズ つなぐ かざる みせる』」でした。

    ビーズ展のテープカット
    写真1 ビーズ展のテープカット
    写真2 ビーズ展パンフレット
    写真2 ビーズ展パンフレット

     ビーズ展の順路としては「ビーズとは何か」の導入からはじまり、「多様な素材」、「歩み」、「つくる」を経て、民博で作成したさまざまな地域の映像21本をアレンジした「ビーズとくらし」を見て、「ビーズで世界一周」と「グローバル時代のビーズ」のコーナーで締めるというものでした。900㎡程の広い空間に約500点ものビーズ資料がならび、ガラス玉や卵、石や貝、歯や骨、木の実など多様な素材をつなぎあわせた装飾品が北海道を中心に世界に広がっている様子を示していました。時代と空間を越えてひろがるビーズの文化を丹念に、ときには執拗と思えるほど追い求め、地球上における人類の広がりと重ね合わせているように感じました。

     ここでは表題のテーマに絞って、いくつかの感想を述べてみたいと思います。まず、アイヌ文化ではタマサイというガラス玉の首飾りが有名ですが、クマ送り儀礼のクマにもつけられていたことを知り、人獣の親近性を感じるとともに、儀礼の前後でどのようにあつかわれたかが気になりました。誰のタマサイで、元の持ち主に戻されたかどうか、といったような疑問です。タマサイは黒竜江流域の山(さん)丹(たん)人との交易によってもたらされたガラス玉(アイヌ玉)を使用する女性用の首飾りです。玉の多くは中国製であり、アイヌがみずからつくることはしませんでした。毛皮や海産物との交易によって玉を入手し、好みのタマサイをつくって母から娘へと継承したのがアイヌ文化です。和人がつくったガラス玉がアイヌ社会に流通するのは19世紀になってからであり、明治末から大正にかけてアイヌ観光がはじまった頃にタマサイも派手になっていきました。ただし、それを身につけて踊りを披露したりしたのは白老や旭川など観光客に接することが増えた一部の地域や人びとだけだったようです。山丹交易のコーナーでは2001年の民博特別展「ラッコとガラス玉―北太平洋の先住民交易」を思い出しました。さまざまな首飾りと「山丹錦」とか「蝦夷錦」とよばれた青地の衣装が目に焼き付いています。

     国立アイヌ民族博物館の基本展示室も見学しました。広々とした明るい空間に最新のテクノロジーを駆使した展示デザインが随所に見うけられました。

    チセ内部を紹介する大型モニター
    写真3 チセ内部を紹介する大型モニター
    プラザ方式という中央広場から四方八方にアクセスできるゾーニングも印象的でした。また、チセ(家)とよばれる茅葺きの伝統家屋が復元されていなかったこともひとつの発見でした。床面には間取りだけを示し、手前の大型のモニターでCGの映像を流すという見せ方は大胆かつ斬新でした(写真3)。チセは野外展示として何棟も復元されているのですから、屋内に展示する必要はないわけです。ちなみに、探究展示テンパテンパ(さわってねの意)はこのたび「第15回キッズデザイン賞」の優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞しました。

     札幌で立ち寄った北海道博物館でも意欲的なアイヌ展示がなされていました。チセに代表される伝統的なアイヌ文化を紹介するコーナーに加え、「現在を知る」というコーナーが設けられ、「明治」と出会った世代から開拓、開発、戦争、高度経済成長、「単一民族国家発言」などをキーワードに現在の世代に至る、「ある家族の物語」をマンガタッチで表現していました(写真4)。また、白老から足を延ばして訪問した伊達市の「だて歴史文化ミュージアム」においても「伊達にふたつの大きな歴史の流れあり」というテーマのもと、縄文・アイヌ文化と海を渡ってきた伊達家の武家文化とを対比・融合させて観覧に供していました(写真5)。

    現在へと続く、ある家族の物語
    写真4 現在へと続く、ある家族の物語
    だて歴史文化ミュージアム
    写真5 だて歴史文化ミュージアム

    いずれにおいても固定的なアイヌ文化と和人文化の対比ではなく、ダイナミックな交流のあった歴史的変遷の過程をふまえて常設展示を構成していました。かつて蝦夷地(えぞち)と称され、明治以降は北海道と改称された北の大地は、いまやアイヌ新法(アイヌ施策推進法)のもとで民族共生の空間をめざしています。白老のポロトコタンは民族共生象徴空間ウポポイとして脱皮し、国立の博物館施設が誕生しました。当財団も今回は国立民族学博物館と国立アイヌ民族博物館とのささやかな橋渡し機能を果たすことができたことをよろこぶとともに、今後も民族学の振興にお役に立てることがあれば出番をいとわない覚悟です。現代で言うところのステーク・ホールダーの皆さまの発展にいささかなりとも貢献できることを願ってやみません。(2021年10月6日)

    理事長徒然草(第12話)
    「公益財団法人の認定を受けました」

    千里文化財団はおかげさまで2021年4月1日をもちまして、内閣府から公益認定を受けて、正式名称が「公益財団法人 千里文化財団」となりました。これも友の会会員をはじめ、関係者各位の長年にわたるご協力、ご支援のたまものと深く感謝申しあげる次第です。

    当財団はこれまでも公益目的の事業展開をしてまいりましたが、あらためて「文化人類学・民族学等の振興を図るため、関係諸機関と連携しその普及に努める。それらの活動を通して人類の多様な社会や文化に対する市民の理解と教養を培い、地域社会に根ざしつつ、ひろく国際社会に貢献する」ことを目的に掲げることとなりました。より具体的には、国立民族学博物館をはじめとする各種機関の活動に対する支援や利用促進など多岐にわたりますが、「国立民族学博物館友の会」の運営など初心を忘れず、心新たに、さらに充実した事業展開をはかってゆく所存です。

    収束の兆しが見えないコロナ禍にもめげず、公益財団法人として文化人類学等の振興をはかるさまざまな事業を展開し、地域に根ざした社会貢献活動に取り組んでまいりますので、今後とも変わらぬご支援とご協力のほどをお願い申しあげます。(2021年4月1日)