理事長徒然草(第18話)
前理事長小山修三先生を追悼する

前理事長小山修三先生が2022年10月26日に天寿を全うされました。満83歳でした。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

小山修三先生は2013年4月1日に理事長に就任され、2018年3月末まで5年間在任されました。ちょうど財団法人制度が見直され、当財団も非営利型の一般財団法人として再スタートを切った時期に当っていました。その意味で従来とはちがう運営に心を砕かれ、慣れない舵取りに腐心されたのではないかと想像しております。

たとえば『季刊民族学』に新風を吹き込もうと「信州の山」の特集を組み、長野県知事と元文化庁長官との鼎談を企画されました(157号、2016年)。また特集「千里から考える ニュータウンとそのゆくえ」も吹田市立博物館館長をつとめた時期の人脈が功を奏しているように思われます(161号、2017年)。わたしはたまたま信州の出身であり、吹田市立博物館の後継者でもあったことから、両方の号に協力し、みずからも寄稿することになりました。

小山先生は1976年に国立民族学博物館の助教授として着任され、縄文文化やアボリジニ文化の研究を推進する一方、コンピュータを用いた人口解析など、人文科学と情報科学のコラボにも熱心でした。各種シンポジウムや展示にも積極的に関与され、研究部長としての重責も果たされました。民博退職後、2004年からは吹田市立博物館の館長として「開かれた博物館」をモットーに果敢に市民参画を率先垂範されました。民博の広瀬浩二郎氏と取り組んだ「ユニバーサル・ミュージアム」をめぐる一連の研究・企画も画期的な業績の一つです。

小山先生は他の追随を許さないほどの馬力の持ち主でしたが、寄る年波を感じられたのか、4年前に理事長職を退かれました。不肖わたしがその跡を継ぎ微力を尽くすことになりましたが、偉大な先達を失ったことは誠に残念でなりません。どうぞ安らかにお眠りください。

なお、以下の追悼文もご参照いただければさいわいです。
吹田市立博物館のホームページ
吹田市立博物館の市民ブログ

理事長徒然草(第17話)
石川県七尾美術館&のと里山里海ミュージアムを訪ねて

石川県七尾美術館のビーズ展写真001
昨年10月の国立アイヌ民族博物館におけるビーズ展に引き続き、今度は石川県七尾美術館で「ビーズ―つなぐ・かざる・みせる」というタイトルの特別展が開催されています(会期:7月30日~9月11日)。民博では巡回展に位置づけていますが、地元出土の考古資料や長谷川等伯の仏画(複製)なども展覧に供されています。いわば民博と七尾美術館の共同展示といっても良いでしょう。展示室3室に加え、廊下やロビーにも関連のポスターや配付資料などがあふれていました。

今回の特別展には七尾美術館と民博に加え千里文化財団も主催者に名を連ねています。そのためわたしも開幕式の挨拶に立ち、テープカットにも参加しました。そこで話をさせていただいたことのひとつは、日本海の沿岸をむすぶ縄文文化や祭礼のことでした。縄文文化としては環状列石や環状列柱が点在すること、その一例として富山湾の北にある真脇遺跡の環状木柱列に言及しました。他方、祭礼としてはいわゆる風流灯篭の連鎖があり、能登のキリコもそのひとつであるが、実は輪島のキリコが民博にも収蔵されていること、また民博のエントランスホールでそれがしばらく展示されていたことも紹介させていただきました。

写真002 写真003

七尾は長谷川等伯の出身地であり、JR七尾駅前には青雲の志を抱いて京に旅立つ銅像が建っていました。平成7(1995)年に開館した石川県七尾美術館も等伯とそのコレクションなくしては存在しえなかったことでしょう。等伯の国宝「松林図屏風」の展覧会のときには2週間で5万人を越える観覧者があったと、ビーズ展を担当された北原洋子学芸員にうかがいました。「松林図」は水墨画ですが、今回のビーズ展ではカラフルな仏画にみられるビーズの装飾が目をひきました。

写真004 写真005

のと里山里海ミュージアム写真006
のと里山里海ミュージアムは4年前の2018年に開館した新しい施設です。能登半島、とりわけ七尾湾を中心とした里山と里海の密接なつながりを示し、環境保全と歴史的・文化的魅力を伝える体感型ミュージアムです。「能登の里山里海」は2011年に世界農業遺産に認定され、以来、里山里海の利用保全活動が活発に展開されています。その拠点のひとつがこのミュージアムであり、どのような展示をしているかに関心をいだきました。もうひとつは、ここの学芸員さんがかつて民博のビーズ展(2017年)の関連イベントに参加されたという話を北原学芸員から聞いたからでした。急なことでしたが、さいわい床坊睦美学芸員にお会いすることができ、そのうえ展示場の案内までしていただきました。

「里山里海」は学術的というより行政主導の用語ではありますが、能登半島ならではの自然環境に根ざした概念として発展途上にあります。それは賛否こもごもの山風・海風に磨かれることで、能登の過去・現在・未来をつらぬく有効な概念となる可能性を秘めています。今後、ノトロジー(能登学)の展開にどうつながるか、その推移をやや遠くから静かに見守ってゆきたいと思っています。 (2022年7月4日)

写真は上から、
写真001 ビーズ展のチラシ
写真002 開幕式のテープカット
写真003 長谷川等伯の銅像「青雲」
写真004-005 長谷川等伯の仏画(複製)等:左から「十三仏画像」、「複製日蓮聖人像」、「複製日天像」羽咋市・正覚院蔵
写真006 床坊睦美学芸員と

巡回展「驚異と怪異」高知で開催

特別展「驚異と怪異」

開催期間:2022(令和4)年4月29日(金・祝)~6月26日(日) 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)※会期中無休【5月3日(火・祝)は入館無料】

会  場:高知県立歴史民俗資料館 3F総合展示室

本展は、令和元年に国立民族学博物館(みんぱく)で開催され、好評を博した特別展「驚異と怪異」の一部を巡回するものです。近世以前、ヨーロッパや中東においては、人魚や一角獣といった不可思議だが実在するかもしれない生物や現象が「驚異」として自然誌の知識の一部とされてきました。また、東アジアにおいては、奇怪な現象や異様な生物の説明として「怪異」という概念が作り上げられてきました。高知展では、みんぱくの資料を中心に独自借用の資料も加え、龍、怪鳥、巨人など世界各地の人びとが創り出してきた不思議な生きものたちを紹介して、人間の想像力の面白さに迫ります。