理事長徒然草(第12話)
「公益財団法人の認定を受けました」

千里文化財団はおかげさまで2021年4月1日をもちまして、内閣府から公益認定を受けて、正式名称が「公益財団法人 千里文化財団」となりました。これも友の会会員をはじめ、関係者各位の長年にわたるご協力、ご支援のたまものと深く感謝申しあげる次第です。

当財団はこれまでも公益目的の事業展開をしてまいりましたが、あらためて「文化人類学・民族学等の振興を図るため、関係諸機関と連携しその普及に努める。それらの活動を通して人類の多様な社会や文化に対する市民の理解と教養を培い、地域社会に根ざしつつ、ひろく国際社会に貢献する」ことを目的に掲げることとなりました。より具体的には、国立民族学博物館をはじめとする各種機関の活動に対する支援や利用促進など多岐にわたりますが、「国立民族学博物館友の会」の運営など初心を忘れず、心新たに、さらに充実した事業展開をはかってゆく所存です。

収束の兆しが見えないコロナ禍にもめげず、公益財団法人として文化人類学等の振興をはかるさまざまな事業を展開し、地域に根ざした社会貢献活動に取り組んでまいりますので、今後とも変わらぬご支援とご協力のほどをお願い申しあげます。(2021年4月1日)

理事長徒然草(第11話)
「人類の文明的課題に向き合う」

新年明けましておめでとうございます。

2021(令和3)年は新型コロナウィルス感染症の第3波のなかで幕を開けました。目下、拡大を食い止めるのは人と人との接触をできるだけ減らすことしかないような状態です。ワクチン接種が解決の有力な手段であることは言うまでもありませんが、その展望も五里霧中といった状況です。

コロナ禍は日本に限らず人類の直面する課題です。当財団ウェッブサイトで公開されている友の会オンラインレクチャーの吉田憲司民博館長の言葉を借りれば、「人類の文明は、今、数百年来の大きな転換点を迎えている」といっても過言ではありません。それは近代化と総称される人類の文明が岐路に立っていることを意味しています。それゆえに近代化を克服するためのポスト・モダンとよばれる動向も生じています。しかし、SDGsと称される課題群が象徴するように、単純な解決方法はどこにも存在しません。

そうしたなか千里文化財団は、公益性、持続性をいっそう向上させようとしています。いままで以上に変容する社会情勢に合わせて継続した文化的な貢献がもとめられているからです。当財団は人類の課題を直視し、未来社会を切りひらくために、文化人類学(民族学)を核とする学術の振興事業をとおして、より良き社会の発展に今後ともつとめてゆく所存です。

昨年11月、民博で比較文明学会の第38回大会がひらかれました。初代館長の梅棹忠夫先生がその創設にふかくかかわった学会です。昨年が1970年の大阪万博開催から50周年ということもあり、今回の大会では、千里文化財団も主催者として加わり、万博基金(関西・大阪21世紀協会所轄)から助成もいただいて、3日間にわたるシンポジウムを開催しました。シンポジウムのテーマは「『いのち』をめぐる文明的課題の解決に向けて」であり、2025年の関西・大阪国際博覧会をみすえて国際的な議論が活発に交わされました。『季刊民族学』第175号(2021125日刊行)ではシンポジウムⅠ「生き物をめぐって現代文明を考える」を中心に、全体の総括もふくめ、特集「生き物と現代文明」を組んでいます。

現代文明がおおきな岐路に立っていることを認識し、生きとし生けるものの未来におもいをはせながら、当財団は心をひとつにし、直面するひとつひとつの課題に真摯に取り組んでゆく所存です。本年も、友の会をはじめ関係するみなさま方のご多幸を祈念するとともに、ご支援とご鞭撻をおねがいもうしあげる次第です。(2021113)

第38回比較文明学会大会(終了しました)

第38回比較文明学会大会

「いのち」をめぐる文明的課題の解決に向けて

チラシイメージ本大会は1970年大阪万博50周年と梅棹忠夫生誕100年という節目に開催されます。2025年の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ですが、梅棹らが構想した「人類の進歩と調和」という理念がいかに継承されうるかを問う絶好の機会でもあります。くわえて、新型コロナウイルスがパンデミックとなり、人類社会の存続を脅かしています。つまり、「いのち」にかかわる重大な文明的課題が急浮上しているのです。そのため、「『いのち』をめぐる文明的課題の解決に向けて」という統一テーマで国際シンポジウムを開催します。コロナ禍により開催の方式はシンポジウムも個人研究発表も基本的にオンラインですが、会場でも少人数の参加が可能です。
当日プログラムはこちら

開催日:2020年11月21日(土)・22日(日)・23日(月・祝)

会場:国立民族学博物館・オンライン

主催:比較文明学会国立民族学博物館・千里文化財団

助成:公益財団法人 関西・大阪21世紀協会

参加申込要項:
比較文明学会会員でない一般の方で、本シンポジウムに参加希望の方は、下記申し込み先メールアドレス宛に、メールタイトルを「比較文明学会参加希望」として、本文に、(1)氏名(2)郵便番号(3)住所(4)電話番号(5)メールアドレス(6)参加希望形態(Aオンライン参加・B会場参加)を記入してお申し込みください。折返し、参加費(資料代500円)のお振り込み先を返信いたします。

申し込み先メールアドレス:hikakubunmei2020@minpaku.ac.jp

申し込み締切り:2020年10月末日 ※締め切りました。

オンライン参加、会場参加とも可能定員がございます。申し込みが可能定員を超えた場合、参加をお断りする場合がございますので、あらかじめご了承ください。

理事長徒然草(第10話)
「『千里眼』150号記念号に寄せて」

6月25日に刊行された同人誌『千里眼』(発行所:千里文化財団)が150号の節目をむかえました。本誌は年4回の季刊誌で、創刊は1983年3月です。発起人には梅棹忠夫初代民博館長以下、小林公平、小松左京、里井達三良など9名の錚々たるメンバーがならんでいます。同人規定には「広域千里(北摂7市3町)に住所、仕事場、その他の関係をもつ知識人」とあり、「同人のご友人で千里のいろいろなところに親しみをもっている方」とあります。内容は随想、論説、小説、詩、紀行、身辺雑記等なんでもよく、写真や絵も可で、投稿されたものをそのままのせるという原則をまもっています。趣意書の最後には「この雑誌が、成熟したおとなの悠然たる風格をもったものになればさいわいである」とむすばれています。

「千里眼」という名称は梅棹先生のアイデアです。千里丘陵とかけていることは言うまでもありません。「文章のカラオケ」というのも梅棹先生ならではの発想です。他人に読ませる原稿ではなく、好きなことを自分のために書く、というのが本誌の良さです。そのための会費は年間10万円でしたが、いまはその半額になっています。千里眼表紙画像

現在の会員数は50名です。150号記念号に寄せて短文を書いた会員が18名。通常どおりに寄稿した人が23名です。かつての同人には弔辞以外、本誌には文章を書いていない司馬遼太郎さんがいましたし、山下俊彦さんや能村龍太郎さんなどの財界人も多数ふくまれていました。またジャーナリスト、医師、弁護士、アーティストなどアカデミズム以外の方がたも多士済々でした。いまでも名簿をみると千里ゆかりの「知識人」がキラ星のごとく名をつらねています。

本号で同人の一人は「おそらく千里眼は後世の歴史家にとって、格好の研究資料になるに違いない」と予言しています。なぜなら、現代の有識人が率直な意見を述べ、感性や生活感覚をともなった実像が赤裸々につづられているからだといいます。それは「その人が生きた時代の写し鏡」であり、「時代の証言の記録」でもあって、記録メディアとしての『千里眼』の価値は永続するというのです。たんなる「文章のカラオケ」が「時代の証言」になるとは、おそれおおいことになってきました。

わたし自身は、『千里眼』に投稿した11回の連載「梅棹忠夫の『日本人の宗教』」(137号~147号)をもとに同名の単行本をこの5月に淡交社から出版することができました。おおくの同人もまた『千里眼』の記事を活用してさまざまな書物にまとめています。梅棹先生の『夜はまだあけぬか』(講談社、1989年)や『裏がえしの自伝』(講談社、1992年)もまた『千里眼』の副産物です。事務局で把握している出版物にかぎっても40点をかぞえます。

きわめて個人的な事柄が人類の歴史にどう生かされるのか、なんとも予想がつきませんが、すくなくとも37年の歴史を蓄積してきた本誌が末ながく発展的に継続されることをねがってやみません。(2020年7月6日)

「驚異と怪異」の巡回展開催

特別展「驚異と怪異――モンスターたちは告げる」

開催期間:2020年4月25日(土)~ 6月14日(日)
※ 会期が次のとおり変更になります。
変更後 令和2年(2020)6月23日(火)~8月16日(日)

会  場:兵庫県立歴史博物館 ギャラリー

ヨーロッパや中東においては、犬頭人、一角獣といった不可思議ではあるが実在するかもしれない「驚異」は、神の偉大な力を示すものととらえられ、自然に関する知識の一部として伝えられました。また、東アジアにおいては、流星や異形の生き物の誕生など、通常とは異なる現象は、天や神仏からの警告である「怪異」としてとらえられ、歴史書のなかに記録されました。
本展では、国立民族学博物館所蔵の民族資料を中心に、人魚、竜、怪鳥、一角獣など、さまざまな世界の想像上の生き物について紹介するとともに、警告・凶兆(モンストルム)を語源とする怪物(モンスター)の文化史的な意味について考えてみます。

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