107号 2004年 新春


モンテビデオのレストラン
森枝卓士

越中富山 サケのぼる川

文・ 出口晶子
写真・ 出口正登

日本の河川で、サケ採捕事業が国家政策としてはじまり20余年が経過した。川をサケ増殖の場と位置づけ、人工ふ化・放流により海のサケ資源の増大をはかる目的ではじまったこの事業は、いまや河川ごとに、ヒトと川のあらたな関係を生みだしている

特集 残響のニッポン

今日、われわれをとりまく風景の大きな部分を占めるのは、自然物ではなく、人工的な構造物である。その意味で、風景はたえず生産され、蓄積され、更新されてゆくものとしてある。そのなかにあって、「残像としての風景」あるいは「風景の痕跡」としかよべないような奇妙な風景と出会うことがある。巨大仏、廃墟、昭和30年代の町並み……。 これら「残像のニッポン」に注目することで、われわれの生きる現代日本社会を逆照射したい

対談 「巨大ぶつ」にさそわれて 宮田 珠己、木下 直之
巨大仏や天守閣といった奇妙なものを抱えこんだ現代日本の風景。風景のなかに存在する、空間的にも時間的にも突出したものは、文化や社会を考えるためのひとつの試金石になるだろう

廃墟と生きる 同時代の遺跡 文・橋爪 紳也/写真・大沼 ショージ
風景は絶えず生産され蓄積され、いっぽうで絶えず消去される。その均衡のなかで「遺跡化した風景」、あるいは「風景の痕跡」が、つねに産みだされている。わたしたちは、いつ廃墟となるかわからない風景と、つねに折りあいをつけながら生活をしていることを自覚するべきであろう

あの日の輝きをもう一度 再現された昭和30年代の町並み 文・近藤 雅樹
国民のおおくが貧しかった。みんなが一生懸命に働き、充実して生きた時代でもあった。そんな時代を懐かしみ、日本各地で昭和30年代の町並みが再現されている。その背景にある現代日本人の心理とは

南半球ワイン紀行 第3回
南欧風ライフスタイルから生まれる地酒

森枝 卓士

南米にありながら、南欧を想わせるウルグアイ。素朴で生活に密着したワインづくりは、地酒そのもの。近年、国内消費の日常ワインだけでなく、輸出を意識し、品質向上にとりくむ潜在的ワイン大国だった

視点2004
今、振り返る始まりの時
9.11ニューヨーク・WEBレポート

冨田 晃

9・11以後の世界を見渡してみよう。アメリカの「テロとの戦争」は、アフガン侵攻、イラク戦争へと発展し、その波紋はさまざまな対立の図式をともなって世界中へひろがっている。そしていま、自衛隊を派兵した日本もまた、その渦中にはいらんとしている。国家と国家の、国家と民族の、そして民族同士、人と人との関係はいかにあるべきなのか。本稿で描かれたニューヨークのマイノリティーたちの姿は、そのありようをさぐるうえで、きわめて示唆的だ。9・11。それはおそらく21世紀をつうじてわれわれが何度も振り返る原点となるだろう