
ポン(Bon)教は中国のチベット自治区全域、四川省、甘粛省、青海省、雲南省からヒマラヤ南麓にまでひろく分布している宗教で、仏教がチベットにもたらされ、政権と結びつく前まではその地域の主流を占めていました。土着的要素と密接な関連を保ちながら、独自の高度な教理体系を築きあげ、少数派ながら今も宗教集団として生き続けています。チベット仏教の哲学・儀礼の随所にポン教からの影響が認められます。また、古いポン教徒はシェンシュン語という未だその系統も文法も明らかにされていない言語を用いていました。この言語はチベット文語の成立に重大な影響を及ぼしたはずであると推測されます。このように、ポン教はさまざまな面で、チベットの文化基盤を代表する宗教であり、その地域を理解する上で不可欠の要素と言えるでしょう。
本展示では、ポン教が築きあげてきた宗教的宇宙の構造の一部を図像資料によって紹介するとともに、ポン教の歴史や現代における分布、儀礼なども紹介します。これによってチベットの基層文化に関する理解を少しでも深めていただければ幸いです。
ツルティム・テンジン師 略歴
ティテン・ノルブツェ寺学堂長 国立民族学博物館客員准教授。
ツルティム・テンジン師は1967年12月生まれのポン教学僧で、現在ネパール、カトマンズ盆地の北西部にあるティテン・ノルブツェ寺瞑想学堂(ドゥプタ)の堂長(ケンボ)を務めている。19歳で出家し、論理学や中観を学んだ後、ゾクチェン教学研究に転じ、1994年ティテン・ノルブツェ寺でゲシェ(博士)位を取得。2003年オックスフォード大学で儀礼用具トルマに関する共同研究に参画。
ティテン・ノルブツェ寺は、ポン教の高僧で、ロンドン大学でスネルグローヴ教授と研究を行ってきたテンジン・ナムタク師が1987年に設立した新しい学問寺で、現在約150名の若い僧侶達がポン教の教育階梯に則り、修行を続けている。
夢枕 獏(ゆめまくら ばく)氏 略歴
1951年神奈川県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒、77年にプロ作家活動を開始。「キマイラ」「サイコ・ダイバー」「闇狩り師」「餓狼伝」「陰陽師」などのシリーズで読者の支持を集める。
89年『上弦の月を喰べる獅子』第10回日本SF大賞受賞。98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞受賞。「陰陽師」など漫画化作品や映画化された作品が多数あり、近年の著作に『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』や『シナン』、『東天の獅子』などがある。
趣味は「釣り」の他、カヌーや登山などアウトドア全般と写真撮影、陶芸、書。狂言、歌舞伎、落語、講談など古典芸能鑑賞や格闘技観戦など。